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医師・医療関係者のみなさまへ

本日休診

チキンラーメンのポケット

府医ニュース

2025年3月26日 第3103号

 AIの臨床応用に関して、政府の個人情報委員会が、統計処理など個人情報が漏洩しない領域の使用に関しては、患者の同意を必要としないという議論を始めた。個人情報を目的としない研究使用が円滑になるということだ。しかし患者の臨床診断が、AIだけで自由にできるという段階ではない。ディープシークショックは世界を揺るがしているが、個人的には歓迎している。
 無尽蔵の電気を食う現在のAIが、小型化できるという道を開いた点で評価されるし、各医療機関単位の閉鎖AI使用に一歩近付いた感がある。しかしAIはどこまで臨床診断に食い込むのだろう。月曜の朝、私はいつも自分の鈍さに腹が立つ。診察時コンピューターに向かう指先が、思うような滑らかさを失っている。時として横のキーなど弾いてしまうから、訂正するのにdeleteキーをパンパン叩く自分の愚かさに腹が立つ。1日休めば自分が分かる。2日休めばプロが分かる。3日休めば観客が分かるということか。患者だけには知られないようにしなければならないが、人の頭は鈍るものだ。要はAIが診療に入ってくると、月曜リハビリの必要性がなくなるわけである。便利は便利であるが、多分自分の頭が数日間回復しないような気がする。ということは、どんどん退化していくということだ。
 実は月曜リハビリの呪縛から解放されると、自分がプロフェッショナルで、まだ戦えるという妙な充実感がある。多分AIが賢くなればなるほど、医師はAIを限定的にしか使わなくなるのではないかと思っている。元祖チキンラーメンの卵ポケット、あんなややこしいものは昔なかった。しかし湯をかけるだけでは、売れないということだろう。我々が考える便利さと、実際使った時の便利感は少しずれている。手間暇かける充実感が人にはある。今はAIのスピードに驚嘆しているが、AIが自分に置き換わり始めた時、強い抵抗感が出てくるに違いない。(晴)