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時の話題
府医ニュース
2025年3月26日 第3103号
医療費の増加による国民への負担軽減のため、昭和48年「高額医療費制度」として創設され、当初は入院医療費のみが対象。その後改正され、外来医療費も対象となり「高額療養費制度」に改称された。本制度は、「国民の命を守る重要なセーフティーネット」である。しかし、最近では人口の高齢化、医療の進歩、高額医薬品の登場によって、高額療養費の伸びが医療費全体の伸びの約2倍の伸び率になっている(厚生労働省保険局資料:平成27年の総医療費100・高額療養費100とした時、令和3年総医療費107・高額療養費114)。高額療養費は、令和元年度から5年度までの4年間で約2割の600億円増加、また1千万円以上の高額レセプト件数は、元年851件から5年2156件と約2.5倍に増加している。他方、家計調査では、平成27年の世帯主収入100・世帯全体収入100とすると、令和5年では世帯主収入107・世帯全体収入116となっている。以上のような状況の中で、本制度の「持続可能性を守る」ためには、見直しも必要である。ところが、患者団体への聞き取りが不十分であったために、患者団体からの反対が強く、またそれを支持する野党などから強く反対された。特に、がんなどの長期療養が必要な「多数回該当」(直近12カ月間で3回以上限度額を超える)の場合に4回目からの負担限度額引き上げは、受診抑制につながり命に直結するとして、患者団体から強い反対があった。政府は多数回該当については一時凍結としたが、「10年間の経済物価動向の変化を踏まえたもの」として「今年8月からの第一段階は予定通り実施するが、8年以降の引き上げについてはいったん立ち止まり、今年の秋までに患者団体を含む関係者の意見を十分聞いた上で改めて方針を検討する」と表明し、首相は理解を求めた。その協議には、前述の野党も入ることも求めた。しかし、日本医師会は3月5日の記者会見で、「制度の維持のためには見直しも一定の理解はできるが、過度な患者負担になることは以前から反対の立場で、患者さんの意見等をよく聞いた上で制度改革するべきである。そして、社会保障関係費を高齢者の伸び以内に抑えるというシーリングの考え自体無理がある。医療費についての見直しも、一つの制度だけ見て考えるのではなく、全体を見て考えるべき」と意見を述べた。東京都医師会も一時凍結を主張し、与党の参議院議員も一時凍結を訴え、3月7日、政府は一時凍結を決めたようである。
確かに国民の世帯収入は上昇しているが、物価の上昇もあり肌感覚として生活に余裕はない。その中でこの改定は国民の理解は得られない。