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時事
府医ニュース
2025年3月19日 第3102号
1月29日に第60回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会が開催され4月1日より定期接種となる帯状疱疹ワクチンについて議論された。帯状疱疹は過去に水痘罹患時に神経に潜伏した水痘帯状疱疹ウイルスが加齢、疲労、ストレス、免疫力低下等で再活性化することで、神経に沿って体の左右どちらかに帯状に時に痛みを伴う発疹が出現する。皮膚症状治癒後も痛みの残る帯状疱疹後神経痛が10~50%で生じ、顔面神経麻痺、眼合併症、脳炎、脳梗塞等様々な合併症が問題となる。
罹患者数は50歳代から増加し70歳代がピークである。4月1日からの定期接種の対象者は年度内に65歳を迎える方、60歳以上65歳未満でヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能の障害があり日常生活がほとんど不可能な方、65歳を超える方については5年間の経過措置として5歳年齢ごと70・75・80・85・90・95・100歳が対象(100歳以上は2025年度のみ全員対象)となる。使用ワクチンは乾燥弱毒生水痘ワクチン(ビケン)[0.5㍉リットルを1回皮下注射]または乾燥組み換え(不活化)帯状疱疹ワクチン(シングリックス)[0.5㍉リットルを2カ月以上6カ月までの間隔で2回筋肉注射]であり、過去に帯状疱疹罹患歴がある場合も未接種者は定期接種の対象となる。交互接種は認められない。医師が必要と判断すれば他ワクチンとの同時接種可能である。インフルエンザと同じくB類疾病であり、接種の努力義務や市町村長による勧奨は無い。ワクチンの発症予防効果は生ワクチンが接種後1年で6割、5年で4割程度、組み換えワクチンが1年、5年で9割以上、10年で7割程度とされ、帯状疱疹後神経痛発症に対する効果も接種後3年で生ワクチン6割、組み換えワクチン9割以上と報告されている。
また、生ワクチンは免疫不全の方には接種できず、他の生ワクチンとの接種に27日以上の間隔が必要である。両ワクチンともに発赤や疼痛、頻度不明でまれにアナフィラキシー等の副反応はあるが、治験中にワクチンと関連ありとされた重篤な有害事象や死亡例は無かった。50歳から80歳までいずれの年代においても非接種と比較し費用対効果が良好であった。問題点として接種費用は任意接種の現在で生ワクチン1回8千円~1万円前後、組み換えワクチン2回4万5千円~6万円前後と費用に差があり、今回の定期接種化で一部公費助成が開始されるが自治体により自己負担額は異なるため接種率への影響が考えられる。また生ワクチン、不活化ワクチンともに製造量、輸入量の増加により4月以降の需要に対応するとされているが、HPVワクチンや昨今の他薬剤例のように出荷制限による接種希望者への対応遅延が起こらないか、生ワクチンについて小児定期接種対象者への安定供給が保たれるか等懸念される。医療現場では接種対象年齢の方へワクチンの選択、有効性、安全性等について引き続き情報提供いただきたい。(昌)