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医師・医療関係者のみなさまへ

大規模イベントに備えたCBRNE研修会

府医ニュース

2025年3月19日 第3102号

大阪・関西万博に向けて関西エリアの体制強化を

 大阪府医師会は2月19日午後、府医会館で「大規模イベントに備えたCBRNE(シーバーン)研修会」を開催した。4月に開幕する2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)に向け、府医救急・災害医療部委員ら約50人がテロリズム対策などに理解を深めた。

 鍬方安行・同部副部長(府医理事)の司会で始まり、加納康至会長があいさつ。大阪・関西万博は、2820万人の来場を見込む世界的大規模イベントであり、府医も各所と連携しながら医療救護体制や救急医療体制の整備に向けて取り組んでいると述べ、本研修会が関西エリアの体制強化につながることに期待を寄せた。
 引き続き、山口芳裕氏(日本医師会救急・災害医療対策委員会委員長/杏林大学医学部主任教授・高度救命救急センター長)が、「CBRNE(シーバーン)災害について」と題し講演した。はじめに、大規模イベントにおけるテロの共通点として、▽世界の政治・経済・社会に衝撃を与える恰好の機会▽開催国で暗躍する組織が主な実行犯▽標的は民間人や民間施設▽開催期間中のほか、開会1カ月前など象徴的な日も狙われやすい――などを挙げた。
 山口氏は、イベント自体の危険性を検討する重要性を強調。開催規模の大小、季節、参加する集団の特性、アルコール提供の有無などがテロリスクに大きく関わるとした。万博は高リスクな位置付けではないが、好意的でない思想を持つグループも一定数存在すると言及した。十分に分析し、集会活動やSNSの発信などにアンテナを張り、タイミングをみながら警戒を高めるよう促した。

爆発音や銃声、閃光を感じたら、すぐに伏せ眼と耳を防御して窪地などに身を隠す

 次いで、近年のテロの特徴を概述した。ターゲットの約70%がソフト(民間施設など)で、爆発物と銃器が攻撃手段の85%を占めると報告。被害者数は0の場合が多く、目的が人命を奪うことから社会を混乱させることに転換していると解説した。爆弾テロは「必ず2回目がある」とし、1回目による人々の混乱や動線を緻密に計算して2回目を実行すると考察した。過去の銃撃テロを提示し、治療を要する場合は、速やかに物陰に移動するなどして治療者側の被弾も回避するよう力説。危険にさらされた時の体勢の取り方などを伝えた。
 あわせて、すべての爆弾は汚染されていると注意喚起。化学剤を列挙し、神経剤や血液剤は曝露後30分以内で死亡に至るとした。駅構内や列車内で起きた強酸類による事件に触れ、化学薬品によるテロの起こしやすさを警告。市中にある物で、何がテロに使われるかといった視点も持ってほしいと結んだ。

CBRNEとは
Chemical(化学)
Biological(生物)
Radiological(放射性物質)
Nuclear(核)
Explosive(爆発物)
の頭文字をつなげた略語。