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医師・医療関係者のみなさまへ

第1回府医勤務医部会研修会

府医ニュース

2025年3月5日 第3101号

革新的植込み医療機器を世界へ

 大阪府医師会勤務医部会(部会長=澤芳樹副会長)は令和6年11月12日夕刻、6年度第1回(通算第64回)「勤務医部会研修会」を開いた。ウェブを併用し、会場と合わせて約70人が聴講した。
 はじめに、藤本康裕・府医勤務医部会副部会長があいさつ。本研修会は昭和58年より実施しており、「日常診療に偏りがちな勤務医の視野を広げることが目的」と研修会の意義を語った。続いて杉本圭相・同副部会長(府医理事)が座長を務め、平田雅之氏(大阪大学大学院医学系研究科脳機能診断再建学共同研究講座特任教授)が、「体内埋込み型ブレインマシンインターフェースによる機能再建」と題して講演した。
 同氏は、東京大学工学部・工学研究科でロボット工学やバーチャルリアリティを研究。自動車会社で車両設計の仕事をした後で医師となり、植込み型ブレインマシンインターフェース(BMI)の道へと進んだ。まず、BMIの対象疾患は、筋委縮性側索硬化症や脊髄損傷などによる「完全閉じ込め状態の患者」だと説明。AIと植込みデバイス技術を用いて、対象者の運動と意思伝達機能再建を目指していると述べた。
 平田氏は、大脳の活動を瞬時に正確に計測できれば、「脳活動の内容を読み取れる」と主張。植込み型脳波計を頭蓋内に留置し、脳信号を解読することで、ロボットやアバターに自律性を持たせる仕組みを考案中だと明かした。また、▽脳信号で発話内容を解読▽腕神経叢・馬尾神経への電気刺激で上下肢を制御――といった基礎研究の進捗状況も示した。
 平田氏は、BMIの性能が向上することで対象患者は指数級数的に増加し、経済効果が期待できるとの持論を展開。実用化に向けては、米国と比べて資金格差があると憂慮しながらも、デバイスラグを解消し、「日本発で革新的植込み医療機器を世界へ届けたい」と結んだ。