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府医ニュース
2025年3月5日 第3101号
3月5日は、二十四節気の「啓蟄(けいちつ)」。「啓」は、戸を開く、「蟄」は虫などが土中に隠れ閉じこもるという意味で、冬籠りの虫達が目覚め、地上に出てくる頃を示す。
啓蟄や
われらは何を
かく急ぐ
中村汀女
あくせく働いているうちに、新年からあっという間に3月になってしまった。もっとのんびりしてもいいではないかという句。
忙しくしていると、余裕をなくし、目の前にあるものに気付けなくなったり見えなくななることがある。そんな時に、思い出す絵本がある。
「ちょっとだけ」(瀧村有子作/鈴木永子絵) 4歳のなっちゃんは、弟が生まれて、お姉さんになった。お母さんは赤ちゃんのお世話で忙しい。初めて一人で、髪を結んだり、ジュースを注いだりと頑張る、なっちゃん。ただ、夕方眠くなった時だけは、どうしてもお母さんに甘えたくなり、声をかける。
「まま、ちょっとだけ、だっこして」
お母さんの答えは、「ちょっとだけでなくて、いっぱい抱っこしたいんですけど、いいですか?」
〈なっちゃんは、ママの臭いをいっぱい嗅ぎながら、いっぱい抱っこしてもらいました〉
お姉さんになったことで感じる切なさ、それを乗り越えて成長していく姿と母親の深い愛情を描く良い絵本だ。
もしかしたら、お母さんは、なかなか泣き止まない赤ちゃんを抱えながら、夕飯の支度もしなきゃ、洗濯物もしまわなきゃと、やらなければいけないことで頭がいっぱいだったかもしれない。ちょっと苛々していたかもしれない。
抱っこすることで幸せになるのは、きっとなっちゃんだけではない。お母さんも抱きしめることで、忙しさでささくれた気持ちを癒されたのだろうと、絵本を眺めながら思う。
すごもりむしとをひらく。ゆとりをもって、うららかな春を迎えよう。(颯)