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時事
府医ニュース
2025年3月5日 第3101号
2月20日、第9回デジタル行財政改革会議が開催され、医療分野では電子処方箋の現況と今後の対応が俎上となった。全国で電子処方箋の運用を開始した施設は、2月9日時点で薬局が67.0%に達するのに対し、病院は4.9%、医科診療所は11.6%、歯科診療所は2.0%にとどまり、年度内の医療機関での導入率は1割弱の見込みと報告された。政府の「医療DXの推進に関する工程表」では〝2025年3月までに概ねすべての医療機関での導入〟が目指されていた。さらなる導入促進策に取り組んだ上で、新たな目標について〝今夏を目処に見直しを行う〟としたことにより、保険証の廃止などこれまで強い力で実現されてきた工程表に、明確な遅れが出た形となった。
もっとも、令和5年1月の運用開始からの約2年間で、4度に及ぶ機能追加や改修が行われ、さらに昨年12月には、電子処方箋発行を1週間に渡って停止し、医療機関や薬局に対しシステム点検と報告を要請している。多くの医療機関が導入を先送りしていても、全く不思議はない。
オンライン資格確認システムもいまだ発展途上である。1月20日にはマイナ資格確認アプリの修正版がリリースされた。情報提供に不同意と入力しても、特定の条件下では薬剤情報だけ同意扱いとなってしまうプログラムの誤りに対するものである。2月1日には、顔認証付きカードリーダーにおいて、包括同意画面で「個別に同意する」を選択した場合、当該医療機関での前回の同意状況を1度の操作で引き継げる設定が追加されている。
カードリーダーについてはこの後3月にも、目視確認の際、資格確認端末との間を少なくとも3往復しなければならない煩雑さを解消する改修が行われる予定である。また、医療機関のモバイル端末にインストールして利用する「マイナ資格確認アプリ」では、現在は〝居宅同意取得型〟の名前が示すとおり、継続する訪問診療を想定した同意の取り扱い方法となっている。従って発熱外来など、通常とは異なる動線の外来診療では、医療機関固有のQRコードやURLから専用ウェブページにアクセスする「マイナ在宅受付Web(オンライン診療等機能)」を用いた資格確認となる。こちらはアプリのような複雑な初期設定を必要とせず、端末を選ばずに利用できる反面、本人認証は暗証番号のみで、目視確認で行うことができない。今後は、発熱外来等でも目視確認可能なアプリを開発中とのことである。便利になるのは、まだまだ先である。
このような中、1月31日に開催された厚生労働省「標準型電子カルテ検討ワーキンググループ」では、標準型電子カルテの試行版(α版)を用いたモデル事業の実施計画が示されている。この3月から開始し、最終的に全国で10カ所程度の地域を対象に行われる。α版は、紙カルテ利用医師の開始ハードルを下げるため、診療録の記載は紙運用とする「紙カルテとの併用を想定した画面」をも開発中とのことである。当然、紙カルテ併用でも「全国医療情報プラットフォーム」連携や電子処方箋、外注検査連携、PACSによる検査画像連携機能は組み込まれている。
工程表では、電子カルテについて〝遅くとも2030年〟には概ねすべての医療機関での導入を目指すとしている。医療DXには、導入費用もさることながら、利便性や完成度の低い段階での無理強いにならないことを、切に願う。(学)