
TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ
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府医ニュース
2025年3月5日 第3101号
平成30年より、重度訪問介護を利用している障がい支援区分6の重度障がい者は、入院中も引き続き重度訪問介護を利用してご本人の状態を熟知した重度訪問介護ヘルパーにより、病院等の職員と意思疎通を図る上で必要なコミュニケーション支援を受けることが可能となっています。
今般、令和6年度障害福祉サービス等報酬改定により、入院中に特別なコミュニケーション支援を行うための重度訪問介護の利用について、障がい支援区分4及び5の重度障がい者も対象となりました。
入院中の重度障がい者のコミュニケーションを支援することで、患者(障がい者)本人が必要とする支援内容を、医師や看護師等の医療従事者などに的確に伝えることができ、安心して入院中の治療を受けながら、療養生活を送ることができます。詳しくは、各市町村の障がい福祉主管課へお問い合わせください。
◇特別なコミュニケーション支援に期待できる例
・利用者ごとに異なる特殊な介護方法(例:体位交換)を医療従事者などに的確に伝えることができ、適切な対応につながります。
・強い不安や恐怖等による混乱(パニック)を防ぐための本人に合った環境や生活習慣を医療従事者に伝えることができ、病室等の環境調整や対応の改善につながります。
失語症とは、脳血管障がいや脳外傷などにより脳の言語中枢が損傷されることで、言語機能が低下する後天的な障がいです。
「話す」「話を聞いて理解する」「読んで理解する」「書く」の言葉に関わる4つの能力すべてが影響を受けるため、周囲とコミュニケーションをとることに困難が生じます。
失語症がある方は全国に20万人~50万人いると推定されています。
医療機関等で失語症がある方とコミュニケーションをとる際は、「短いことばでゆっくり話す」「要点を漢字で書く」「返事をゆっくり待つ」などに注意してください。言葉以外の手段として身振りや絵、写真、図を使用することや、選択肢を提示すると伝わりやすくなる場合があります。言葉が出なくても、本人のテンポに合わせてじっくり会話に向き合いましょう。
大阪府では失語症がある方へのコミュニケーション支援として、支援者の養成研修を実施しています。研修では、「リーダー養成コース」(研修修了後、失語症者向け意思疎通支援者として府に登録のうえ、府が実施する派遣事業において活動していただくことを想定)と「パートナー養成コース」(失語症がある方の親族等、身近な関係の方を想定)の2種類のコースを開講しています。
例年、5月~6月頃に受講者の募集を行っており、大阪府のホームページのほか、様々な場所にて募集要項の掲載・配架の協力をお願いしております。医療機関等の皆様におかれましてもご協力をお願いいたします。
大阪府では、社会での失語症がある方の支援を促進するため、「ことばの支援のお願いシール」を配布しています。このシールは、外見からはわかりにくい失語症がある方が、外出先等でコミュニケーション支援を受けやすくするために作成したものです。大阪府のホームページからダウンロードできます。また、窓口でも印刷済のシールを無料で配布しています。
【窓口】大阪府福祉部障がい福祉室自立支援課社会参加支援グループ
(大阪市中央区大手前3―2―12府庁別館1階)
失語症の特徴
①言葉に関わる脳機能に障がいが生じる。(機器による代替が困難)
②脳損傷の部位や広さなどで、言葉の症状が一人ひとり異なる。
③言葉に関わる障がいのため、自分の困難を自ら訴えることができない。
④外見からはわかりにくい障がいのため、話をしないとわからない。
⑤言葉に障がいがあっても、考える力は残されている。(認知症ではない)
事業者による合理的配慮の提供を法的義務とする障害者差別解消法の改正法が令和6年4月1日から施行されました。
障害者差別解消法では、行政機関や事業者による『不当な差別的取扱い』と『合理的配慮の不提供』を、障がいを理由とする差別として禁止しています。
不当な差別的取扱いとは、障がいを理由として、正当な理由なく医療の提供を拒んだり、制限をしたり、条件を付けることです。
合理的配慮とは、障がいのある人からのバリアを取り除いてほしいとの意思の表明があった場合に、負担が重すぎない範囲でそのバリアを取り除くため行う変更や調整のことです。
合理的配慮の内容は、障がい特性や具体的場面によって様々なため、障がいのある人との対話を通じて、柔軟に対応していただきますよう、お願いします。
また、各事業を所管する国の行政機関は、事業者が適切に対応できるようガイドライン(対応指針)を定めています。医療機関の場合は、厚生労働大臣が定める対応指針を参考に、障がい者差別解消に取り組むことが期待されています。
対応指針には、不当な差別的取扱いや、合理的配慮の具体例等も記載されていますのでご参考ください。
なお、市町村や府には、障がいのある人やその家族・支援者だけでなく、事業者の方も相談できます。まずはお近くの市町村の相談窓口へご連絡ください。
◇医療分野における不当な差別的取扱いの例
・知的障がいや精神障がい等、特定の障がいがあることを理由に診察を拒否する。
・院内が土足禁止であることを理由に車いす利用者の診療を拒否する。
・身体障がい者補助犬の同伴を拒否する。
◇医療分野における望ましい合理的配慮の例
・視覚障がいのある人から意思の表明を受け、マイナ保険証で受診できるよう、資格確認端末機の操作を代行する。
・聴覚障がいのある人から意思の表明を受け、受付や診察時に筆談やジェスチャーでコミュニケーションを行う。
※事例は、あくまでも例示で、これらに限定されたものではありません。また、過重な負担が求められる場合には、合理的配慮の不提供に該当しません。