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時事
府医ニュース
2025年2月26日 第3100号
令和7年1月23日に第192回社会保障審議会医療保険部会が開催され、6年12月12日開催の第189回同部会における「医療保険制度改革」での議事等に基づき、報告があった。高齢化の進展や医療の高度化、高額薬剤の開発・普及等により高額療養費の総額が年々増加(総医療費の6~7%相当)し、医療保険財政に大きな影響を与えており、結果として現役世代を中心とした保険料が増加してきた。そこで、セーフティーネットとしての高額療養費の役割を維持しつつ、健康な方を含めたすべての世代の被保険者の保険料負担の軽減を図る観点から見直す。すなわち、負担能力に応じたきめ細かい制度設計を行う観点から、①各所得区分ごとの自己負担限度額を引き上げる(低所得者に配慮)とともに、②住民税非課税区分を除く各所得区分の細分化を実施する。
具体的には、各所得区分ごとの自己負担限度額の引き上げは、前回見直しを行った約10年前からの平均給与の伸び率が約9.5~12%であることを踏まえ、まず、平均的な所得層(年収約370~770万円)の引き上げ幅を10%(年収により、2.7~15%の引き上げ幅)に設定し、2025年8月から実施する。次いで、各所得区分を細分化し、それぞれの所得に応じて、自己負担上限額を26年8月と27年8月に2段階で引き上げる。
あわせて、年齢ではなく能力に応じた全世代の支え合いの観点から、低所得高齢者への影響を極力抑制しつつ、70歳以上固有の制度である外来特例の見直しを行うことにより、すべての世代の被保険者の保険料負担の軽減を図る。すなわち、外来特例においては26年8月から、それぞれの上限は「一般(2割負担)」が1万8千円から2万8千円に、「一般(1割負担)」が1万8千円から2万円に、「住民税非課税」が8千円から1万3千円に引き上げられ、「住民税非課税(所得が一定以下)」は8千円に据え置きとなる。なお、負担軽減対策として、過去12カ月以内に3回以上、上限額に達した場合に4回目から上限額が下がる「多数回該当」の限度額も引き上げる方針を示した。
以上の見直しによる財政影響と保険料軽減効果は24年予算ベースを元に推計した27年医療費ベースの推計値では、給付費総額5330億円の減、加入者一人当たりの保険料は3100円の減である。
なお、最近になり「高額療養費制度」の自己負担を引き上げる政府案を巡り、政府・与党が負担増の軽減に向けた協議を始めた。石破茂首相は2月4日の衆院予算委員会で「当事者の理解を得ることは必要だ。限られた時間の中で最大限努力する」と答弁した。当初案の修正を巡り、厚労省では「多数回該当」の引き上げ幅を緩和する方針が浮上し、14日には福岡資麿厚生労働相が「高額療養費制度」の限度額引き上げ案を修正し、「多数回該当」の限度額引き上げを見送ると表明した。日本医師会の努力にも期待したい。(中)