TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ

加納会長、会務運営の指針などを語る

府医ニュース

2025年2月26日 第3100号

府民や会員に医療情勢を正しく伝える

 加納康至会長は、第329回大阪府医師会臨時代議員会(12月19日)で会長に選任・選定された。1月1日からの加納執行部始動に際し、現在の心境や会務運営の方針などを聞いた(聞き手・大平真司理事〈広報担当〉)。

大平 広報担当の大平です。本日は1月1日から会長に就任された加納会長に会務方針などを伺います。どうぞよろしくお願いいたします。
加納 よろしくお願いいたします。
大平 中尾正俊前会長のご療養中には、会長代行を務められていましたが、どのような心境だったのでしょうか。
加納 中尾先生は早期に復帰されると思っていたので、あくまで代理という認識でした。行事にお招きいただいてごあいさつをするような仕事が多く、緊張やプレッシャーも多少ありましたが、気持ち的には比較的楽だったと思います。
大平 会長に就任後はいかがですか。
加納 年間の行事が一周するまでは緊張が続くと思います。就任後は、発言が独り歩きしないよう、言葉選びにはより気を付けています。
大平 はじめに、加納会長のお人柄を知っていただきたいと思います。先生が医師を志したきっかけを教えてください。
加納 感動的なエピソードでもあればいいのですが(笑)。実は、医師をしていた父親の背中を見て育ったので、誰かに言われた訳でもなく、いつの間にか自分も医師になると思い込んでいました。ですので、「この職業に就きたい」と思ったことはありませんが、考古学に憧れたことはあります。
大平 15年近く府医役員として携わっておられますが、印象に残っている出来事などを教えてください。
加納 理事になる前に参加していた勉強会で、故植松治雄先生にご指導いただいたことです。理事になった後もご指導いただく機会があり、非常に影響を受けました。孫弟子のような立ち位置なのかもしれませんが、本当に印象深いです。
大平 植松先生は、医療問題研究委員会も設置されました。
加納 そうですね。庶務担当理事をしていた頃には、私も携わっていました。植松先生がお持ちだった次世代に伝え引き継ぐ情熱を、私も受け継いでいきたいと思います。

引き継いだ4つの柱 深化に向けて

大平 昨年からは、中尾前会長が掲げた「4つの柱」を中心に執行部が動き出し、引き続き推進される意向をお示しですね。
加納 はい。4つの柱は、中尾先生を中心に役員の共通認識として推進してきました。大切にしています。
大平 まずは、「地域医療体制の充実」についてはいかがでしょうか。
加納 今年度、病院団体と緊密に実りある会合が開催できました。病院団体と医師会が強固な連携を取れているのは全国的にも珍しく、お互いの意見をすり合わせて行政に訴えることができたのは大きな成果です。
大平 医師会同士の連携についてはいかがでしょう。
加納 他府県の医師会との情報交換は非常に有効です。東京とは都市型の共通課題があり、また、近畿圏内でも同じように抱える問題があるので、それぞれ連携を深めていきたいですね。
大平 次に「丁寧な医療DXの提案」は、どのようにお考えですか。
加納 政府が無理やり押し付けてきている様相は否めません。多くの方は、拙速すぎると感じる一方で、徐々にデジタル化が必要なこともお分かりだと思います。日医から、工程や費用にゆとりを持たせるよう働きかけていただきたいです。ランニングコストは国が負担するべきものだと考えています。デジタル機器に疎い方が、DXを理由に地域医療の現場から去ってしまわないようにしなければなりません。
大平 「広報部門の強化」については、どのようにお考えですか。
加納 医療情勢を直接府民の方に訴える機会が比較的少ないと感じています。多くの方は、当たり前のように医療を受け、医療機関が経営難にあることをイメージしづらいと思います。しかし、今しっかりと医療財源について考えないと、国民皆保険が維持できなくなるという現状を訴えたいです。理解が深まれば、政策にも変化が生まれるのではないでしょうか。
大平 マスコミは医療機関の状況の厳しさは報道しません。しかし医師会が発信すると、自分達のことばかり考えていると言われてしまいバランスが難しいです。
加納 そうですね。状況の厳しさという切り口ではなく、「全国に1千万人近くの医療・介護従事者がいて、その生活を守らなければならない」といった視点であれば、共感されやすいのではないかと考えます。
大平 医師会が積極的に正確な情報を発信していくことが大切です。
加納 はい。一方でエビデンスが不確かな情報もありますが、結果の事実をお話しすることはできます。例えば、コロナワクチンを接種したことでコロナによる死亡者が少ないことは事実です。デマやSNSに惑わされないよう、事実を伝えていく必要があります。
大平 「風通しの良い組織運営」については、いかがでしょうか。
加納 実感として、少しずつ変わってきていると思います。継続的な取り組みは不可欠ですので、うまく進んでいってほしいと思います。
大平 世間では人材不足との声もあり、府医事務局の職員採用も気になります。
加納 幸い4月から新卒職員を数人採用することができました。
大平 活気がでそうですね。日医や郡市区等医師会との連携はいかがでしょうか。
加納 茂松茂人先生が副会長に就任しておられることもあり、日医との連携は円滑です。ほかの常任理事の方にも講演等でよく来阪していただいています。郡市区等医師会との交流の機会はまだまだ十分ではないと感じています。府医からは、ブロックなどで開催される勉強会などへ積極的に参加したいと思っていますので、地域医師会からは忌憚のないご意見をいただきたいです。

医師会の組織強化

大平 最後に、「4つの柱」に加えて、今後みなさんに注目していただきたい取り組みをお教えください。
加納 組織力の強化ですね。やはり、団体として発言力を高めるには、いかに多くの会員で構成するかがカギとなってきます。
 先日の医療問題研究委員会でもお話ししましたが、医師会は、現場の意見を伝える手段です。医療は制度に則っていますが、時にそれが現場にそぐわないことがあります。そのような時に現場の声が影響力のあるものであれば、改善につながります。会員数を増やし、影響力のある形で意見を届けられるようにしたいです。
 外から意見を届けるほかに、中からの意見の発信もあります。現在、今夏の参議院議員選挙に向けて、日医の釜萢敏副会長を日本医師連盟の組織内候補として擁立しています。こういった政治的なお話をすると、個人の政治信条を邪魔しているように感じられる方も多いのが実際だと感じます。しかし、医師としてこれからの医療を守るために一致団結することも重要です。特に大阪においては、これまでの組織内候補の得票率が、A会員数比で全国最下位ということを非常に重く受けとめています。今回の参議院議員選挙では、組織内候補の得票率をアップさせたいと強く思います。ご理解とご協力をお願いするとともに、丁寧にお話ししていかなければならないと考えています。