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時事

診療報酬改定後の評価を望む

府医ニュース

2025年2月19日 第3099号

医療機関の倒産・休廃業解散動向調査

 信用調査会社帝国データバンクは令和7年1月22日、『2024年の医療機関の倒産・休廃業解散動向調査』を発表した。
 病院・診療所の倒産数37件(病院6件、診療所31件)、休廃業・解散数604件(病院17件、診療所587件)であり、倒産件数は平成19年と同数で過去最多、休廃業・解散数は過去最多を記録した。負債10億円以上の倒産は地方病院に多く見られる。
 令和5年実施の『第24回医療経済実態調査』の病院医業利益率からは、コロナ補助金が見直された前後で経常利益が赤字転落した施設の割合が著しく増加していることが分かる。その後の推計として、コロナ禍後でも回復が見られないまま5年度はマイナス10%を超えるとされていた。
 全日本病院協会実施の『2024年度病院経営定期調査』の病院収支では、収入減少に加え、コロナ禍以降の感染対策、医薬品、設備費の増大、人件費など支出の増加が病院経営の圧迫に拍車をかけており、地域医療の要となる病院機能は低下の一途を辿っている。
 先日の相澤孝夫・日本病院会長の「謀反を起こすか、一揆を起こすか」という言葉は決して大袈裟なものではない。
 一方で診療所の医業利益率はコロナ前後で平均6.2%から6.4%へ改善したと見なされ、財務省が診療報酬引き下げを主張する論拠となった。しかし前述の倒産件数の多さを見る限り、コロナ禍に伴う一時的な増収が統計に含まれていることを恣意的な解釈とする見方も的外れなものではないだろう。同データの別解析では、赤字経営の医療法人は26.3%に上るとのデータもある。倒産医療機関の6割が収入減少を主因としており、5年度の診療報酬改定が引き金となったことは想像に難くない。
 特に診療所の事業形態は様々であり、解析方法次第では偏った解釈がなされる可能性があるため、純粋な医業収入としての診療報酬に焦点を当てた調査解析を医師会がデータ提示することが喫緊の課題と考える。いずれにせよ『第25回医療経済実態調査』の結果を精査し、前回と同じ轍を踏まないことを望む。
 少子高齢化に伴う社会保障費の増加は避けられない問題であるが、社会保障の充実は数字には現れない社会経済活動の「底」を支える国家の礎であり、医師会は積極的に国家財政にも声を上げていかねばならない。いまだ生活にゆとりを見出せていない多くの国民に「安定した社会福祉財源としての消費税」という呪文を唱えて自ら死に番となる必要はあるまい。(隆)