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医師・医療関係者のみなさまへ
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府医ニュース
2025年2月19日 第3099号
大阪府医師会は、大阪府との共催で「障害者総合支援制度と医師意見書に関する説明会」を令和6年11月21日午後、府医会館で開催。ウェブとの併用の実施し、約150人が受講した。障害者総合支援法では、地域社会における共生の実現に向け、障害者の日常生活の充実だけではなく、社会生活を総合的に支援するものとなっている。障害者数全体は年々増加しており、近年では在宅で過ごす方が増加傾向となっている。
中村芳昭氏(府医介護・高齢者福祉委員会委員/大阪精神科診療所協会副会長)が座長を務め、大平真司理事があいさつ。続いて、橘俊宏氏(大阪府福祉部障がい福祉企画課制度推進グループ課長補佐)が、「障害者総合支援制度における障害支援区分と医師意見書」について説明した。
橘氏は、障害者全体数や、在宅・通所の障害者数の伸びにより、福祉サービスの利用が増え、関連予算も15年間で3倍以上に推移したと報告。あわせて、障害保健福祉施策の変遷を概述した。
次いで、障害者総合支援法における「障害支援区分」を解説した。「障害の程度(重さ)」と「必要とされる支援の量」は比例しないため、心身の状態に応じて必要とされる標準的な支援の度合いを総合的に示す区分として定められていると説明。市町村がサービスの支給決定時の勘案事項の一つとするほか、▽報酬単価の多寡・職員配置▽市町村に対する国庫負担基準額▽利用できるサービス――などの決定時に活用されるとし、給付との関係を詳説した。
医師意見書については、審査判定の根拠となる重要な情報であるため、「記入漏れ」「特記事項の十分な記載」に注意を呼びかけた。あわせて、①一次判定(コンピュータ判定)②二次判定(市町村審査会における審査判定)③認定調査による調査結果の確認・修正④サービスなど利用計画作成――時における医師意見書の役割を解説し、現状や今後必要な「支援の量」を意識してほしいとアドバイス。項目ごとに記載のポイントを伝えた。
さらに介護保険との関係に言及。「障害支援区分」と「要介護度」の違いや、「介護保険」と「障害福祉」のサービスの違いを提示した。
最後に、障害者差別解消法に触れ、不当な差別的取り扱いと合理的配慮について具体的な事例を用いて考察。対応が形式化しないよう個別性や多様性を理解し、建設的な会話を心がけるよう訴えた。
李利彦氏(府医介護・高齢者福祉委員会委員/大阪精神科診療所協会副会長)が、「医師意見書書き方のポイント」と題し、主に高次脳機能障害の場合の記載上の留意点を説示した。
はじめに、脳の障害として「発達障害」「精神障害」「退行性障害」「脳損傷」を紹介した。医学的にはいずれも高次脳機能障害だが、行政用語としては「脳損傷」を指すと前置き。身体・心理・精神の各側面から症状が現れるとした。
医師意見書については、「行動および精神等の状態に関する意見」に係る精神・神経症状を中心に説明した。①意識②記憶③注意④遂行機能⑤社会的行動⑥そのほか――の障害の特徴や、症状が発症する背景を考慮した対処の考え方を示した。
また、「特記すべき事項」は市町村審査会による審査判定で活用されるが、特に高次脳機能障害の場合は記載内容も多いと語り、障害を持つ本人の生活のしづらさに注目して記載することを促した。
平成25年4月に「障害者総合支援法」が施行され、難病の方々も障害福祉サービスの対象となった。その対象疾病は、当初の130疾病から年々拡大し、令和6年4月で369疾病となった。
平成28年4月には、「障害者差別解消法」が施行され、障害を理由とする差別のない社会を目指して、「不当な差別的取り扱いの禁止」「合理的配慮の提供」などが、医療機関を含めた社会全体に求められている。
令和3年4月、大阪府は全国に先駆け、「大阪府障がい者差別解消条例」を改正した。これにより、これまで努力義務とされていた「事業者による合理的配慮の提供」が義務化された。本年度からは、全国的にも義務化されて、改めて日々の診療の中で心がけ実行しなければならない。
また、現在は、高齢者や障害者施設における医療提供体制、介護人材の不足などを含めた対応も急務となっている。
本日の講義の中心である「医師意見書」は、介護給付などの決定に、「知的障害者や精神障害など多様な障害の特性、そのほかの心身の状態や支援の度合い」が総合的に反映されるものだ。一次判定や二次判定に非常に重要な役割を果たしている。
本説明会が、障害者施策の理解と意見書作成の一助となることを期待する。