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府医ニュース
2025年2月19日 第3099号
大阪府医師会は令和6年12月1日午後、府医会館で、「雪の花 ―ともに在りて―」特別上映会および感染症に関する講演を実施した。当日は、2300超の応募から当選した約250人が来館。講演や映画を通して新興感染症の理解を深めた。
本映画の舞台は、江戸時代末期。天然痘が猛威を振るい、多くの人命を奪った。主人公の町医者・笠原良策が、治療法を探して駆け巡る実話だ。
そこで鍵となるのが現在のワクチン接種に通じる「種痘」。新型コロナの大流行を乗り越え、改めて感染症に対する理解を促した。
大平真司理事の司会で開会。府医は府民の命と健康を守るために活動すると語った。
上映に先立ち、忽那賢志氏(大阪大学大学院医学系研究科感染制御学教授)が、「人類と感染症の歴史」と題し講演した。
まず、ペストが流行したナポレオン時代の絵画や、スペイン風邪流行時にマスクを着用してスポーツ観戦する写真などを紹介。ペスト侵入の阻止を目的に検疫が始まったことや、無症状者の感染予防対策など、感染症対策の源流をたどった。
後半は、天然痘を詳説。重症度と感染力が高い感染症だが、唯一根絶された感染症であり、種痘によって根絶できたと力を込めた。
天然痘に対する種痘は、イギリス人医師ジェンナーが耳にした牛の世話係の「牛痘に感染したから天然痘にかからない」という発言がきっかけ。牛痘は人が感染しても軽症だが、免疫ができて天然痘にかからないという仮説から始まった。忽那氏は、牛痘感染者の膿を植え付けて人工的に感染させるため、「牛になる」と排除する動きもあったと伝えた。
日本に牛痘の種痘が持ち込まれた際にも、引き札などで普及が図られたがデマもあったとし、昨今の感染症対策を巡る動きとの類似性を振り返った。
忽那氏は、天然痘の伝播は数百年かかったが、近年の新興感染症は瞬時に広がると憂慮。現在広がっているエムポックスは、天然痘と同一種であり、天然痘ワクチン接種の中止が拡大の要因との見解を示した。
最後に、「感染症との戦いは今後も続く」と見通し、感染症に対する意識の向上が引き続き求められると結んだ。
江戸時代末期。死に至る病として恐れられていた疱瘡(天然痘)が猛威を振るい、多くの人命を奪っていた。福井藩の町医者で漢方医の笠原良策(松坂桃李)は、患者を救いたくとも何もすることができない自分に無力感を抱いていた。自らを責め、落ち込む良策を、妻の千穂(芳根京子)は明るく励まし続ける。
どうにかして人々を救う方法を見つけようとする良策は、京都の蘭方医・日野鼎哉(役所広司)の教えを請うことに。鼎哉の塾で疱瘡の治療法を探し求めていたある日、異国では種痘(予防接種)という方法があると知るが、そのためには「種痘の苗」を海外から取り寄せる必要があり、幕府の許可も必要。実現は極めて困難だが、絶対に諦めない良策の志はやがて、藩、そして幕府をも巻き込んでいく――。
吉村昭氏の原作に惹かれ、ぜひこの主人公に会いたくなり製作しました。映画を作る際には、家族全員で観ることができるように心がけています。映画は虚構を積み重ねていきますが、その中で花が咲き、実となり、広がっていけば嬉しく思います。
祖父が医師で、府医に縁がありましたが、6年前に100歳で亡くなりました。そのこともあり、ずっと医師の話を作りたいと思っていました。製作中はコロナ禍だったため、映画の世界と時勢が重なり、先駆者の苦労がより感じられました。未来への祈りを込めて作りました。