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府医ニュース
2025年2月5日 第3098号
近年、買い物やサービスの利用を通じてポイントを貯め、それを商品券や特典に交換する〝ポイ活〟が注目されている。この活動は若年層や主婦層を中心に広まり、企業の販売促進策としても活用されている。しかし、こうしたポイント制度が行政施策にまで広がる現状には慎重な検討が必要である。
行政施策でポイント制度が採用される例として、ふるさと納税がある。本来、地域振興を目的とした寄付を促す制度だったが、近年では寄付額に応じたポイント付与がインセンティブとなり、制度の趣旨が変容しているとの指摘がある。
また、マイナンバーカードの普及施策では、カード取得や保険証登録に対して最大2万円分のポイントが付与された。この取り組みは一定の成果を上げたが、カードの利便性よりもポイント目的で取得した人が多かったと考えられる。
このようにポイントを得るためだけに政策を受け入れる行動が広がると、政策本来の目的や社会全体の価値観(倫理観、公共心)が歪む恐れがある。また、高齢者にはポイント制度の仕組みや意図を理解しにくい場合があり、短期的な施策の背景が伝わりにくい。
行政が政策を進める上で予算を投じることは一般的な手法だが、短期的なインセンティブに頼るのではなく、持続可能な長期的効果を見据えた施策が求められる。社会保障分野、特に医療や福祉においても、政策の本質を見極め、持続可能な社会の安定を目指すべきだ。短期的な成果に捉われず、利用者、つまり国民との信頼を築くための取り組みが重要である。
行政が〝ポイ活〟に依存する流れは、新自由主義的なバウチャー制度の方向性に類似しており、社会全体の公平性や安定に影響を及ぼす可能性がある。この流れに引き続き警戒を置きつつ、新たな政策には熟議を求める必要があるだろう。(真)