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時事
府医ニュース
2025年2月5日 第3098号
令和6年12月16日、第59回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会が開催され、HPVワクチンのキャッチアップ接種について議論された。子宮頸がんは日本で年間1.1万人が罹患、約2900人が死亡する。患者は20代から増え始め40代が最多である。
2価4価ワクチンは子宮頸がんの原因の6~7割、9価ワクチンは8~9割を占めるウイルス型を防ぐ。副作用の可能性報道による平成25年6月からの積極的勧奨の差し控えから、世界の中で日本のHPVワクチン接種率が極端に低い状態となった。その後名古屋スタディー等でHPVワクチン接種と症状発生との因果関係は示されず、専門家による安全性、有効性の確認が行われ令和4年4月1日から積極的勧奨の再開および接種の機会を逃した方に対するキャッチアップ接種が開始された。期間は7年3月31日まで、定期接種は小学校6年生から高校1年生相当の女子が対象、キャッチアップ世代として平成9年4月2日から20年4月1日までの間に生まれた女子も対象となった。
令和6年度上半期時点での累積初回接種率はキャッチアップ世代(緊急促進事業により接種を行った世代を除く)で概ね30~40%台である。また積極的勧奨再開後の医療機関からの副反応疑い報告状況も大きな増加無く現時点では重大な懸念は認められないと判断されている。
有効性についてこれまで国内の知見が限られていたが、子宮頸がん検診時点で20~26歳であった女性を対象にワクチン接種1回以上の有効性はCIN3+(子宮頚部高度異形成以上)の病変に対する発症予防効果は86%であった。最終年度の6年6~7月には文部科学省から全国の大学、高等専門学校において周知広報依頼、厚生労働省事業としてX、Instagram等でも配信広告が行われ、HPVワクチン納入数は積極的勧奨前の20万本弱(3年9~12月)から140万本(6年7~9月)と増加した。一方、夏以降の需要の増大により地域への安定供給のため6年10月からメーカーによる限定出荷がなされたため、医療現場で接種希望者の要望に添えない状態が問題となっていた。
これに対し期間中(4年4月1日~7年3月31日)に1回以上接種している者については、①期間終了後も公費で3回の接種を完了できるよう経過措置を設ける②従来のキャッチアップ接種の対象者に加え、7年度に新たに定期接種の対象から外れる平成20年度生まれの女子も対象とする③期間はキャッチアップ接種期間終了後1年間とする――ことが立案されている。
改正確定前の現時点の問題としてキャッチアップ接種期間以前の過去の接種者は期間後に接種した場合、公費とならないため、期間内の1回以上の接種が必須となる。メーカーでは生産体制の強化や輸入量の増加等の対応が行われるとともに、国においても国家検定期間を短縮するなどの対応を行っており出荷量(見込みを含む)を確保している。
令和7年1~2月には約160万本以上の出荷量となるためこれまで新規予約受け入れが困難であった医療機関も納入再開に伴い年度内の接種希望者への対応が望まれる。経過措置の内容と合わせて、ワクチンの有効性・安全性についても、引き続き丁寧かつ確実に情報提供を行うことが重要である。(昌)