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医師・医療関係者のみなさまへ
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府医ニュース
2025年2月5日 第3098号
◆昨年末、日本の酒造りが世界文化遺産に登録。麹を使う希少な並行複発酵での500年以上続く酒・焼酎・泡盛造り。祭礼など文化風習でのスピリチュアルな意義も評価される。
◆同慶だが、文化遺産には影もある。沖縄奄美での洗骨。死者を亀甲墓で数年間風葬した後、骨を泡盛で洗い清める。危険な存在の「死霊」を、門中一族を守る「祖霊」へと昇華させる尊い儀式。だが、洗骨は長男の嫁の仕事とされていた。
◆たまたま招き入れられた清明祭で、高齢の女性が腐肉を削ぎ、洗う辛さを話してくれた。一方、男性は洗骨後の宴で泡盛と料理を楽しむ。女性は調理・給仕に忙殺。それ故、家を離れる女性もあると。当然、戦後には洗骨の風習は消えた。
◆各地の酒が欠かせぬ行事でも、大なり小なり影はあろう。文化遺産を考える時、常に影を意識せねばと。若手医師を指す「レジデント」の語義は「住み込み」。昼夜を問わないハードな育成を懐かしむ声も聞くが、やはり文化遺産の影となっていると。新年の盃に若き頃を想う。(翔)