
TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ
TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ
時の話題
府医ニュース
2025年2月5日 第3098号
令和5年度厚生労働科学特別研究事業「日本専門医機構における医師専門研修シーリングによる医師偏在対策の効果検証」(代表研究者:渡辺毅一・日本専門医機構理事長)が報告された。
①データベース分析
東京都に専門研修段階で全国の大学や初期研修地から採用が集まるが、専門医研修修了後の就業地は全国に散らばる。しかし、北海道・東北地域に帰る比率が小さい。東京都、神奈川県、愛知県、大阪府、福岡県では、初期研修から専門研修実施時に人数合計比率は上昇する。シーリング対象地域では、初期研修のまま同府県で専門研修を受けることが多い。
研修プログラム不合格者293人の動向分析では、領域・都道府県ともに変更190人(64.8%)、都道府県のみ変更97人(33.1%)、領域を変更6人(2.0%)であった。シーリングの有無にかかわらず、領域重視であった。
卒業大学・初期研修地・専門研修地と勤務地との関係では、すべて同一は40%。いずれかの段階で異なる都道府県の場合、勤務地と大学(66%)、初期研修地(66%)、専門研修地(80%)がそれぞれ同一で、専門研修地と勤務地が同一の割合が多かった。専門研修段階から研修地を変更した専攻医の勤務地と勤務先の一致は約10%で、専門研修段階での介入による地域定着効果は限定的に見られた。
シーリングのある領域では、医師多数県の採用数が抑制され、医師少数・中程度県では採用数が増加していた(2018~23年)。
②専攻医調査
現在の都道府県を選択した理由は、「出身地」(32.1%)が最多で、「自分の希望に最も沿った医療機関・プログラム」(31.3%)、「出身大学の都道府県」(31.1%)、「地域枠指定の都道府県」(9.0%)。地域枠所属の専攻医は専門研修後に70.7%が「残る」と回答した。
医師不足地域の医療機関に勤務するとした場合、必要な支援は、「勤務地や待遇、住まいの調整、子どもの就学案内、配偶者の就学支援(ドクターバンク、公的無料マッチング支援)」(54.7%)、「代替医の派遣・調整」(54.4%)、「診療上のサポート体制」(専門医への遠隔相談など)(50.3%)など。少数区域での勤務が地域医療支援病院の管理者要件等のキャリア上のインセンティブは、男性が女性より11.8ポイント高かった。
③専門研修プログラム統括責任者調査
専攻医募集のシーリングが「医師の地域偏在」対策に貢献しているかどうか、「そう思う」「どちらかというとそう思う」は27.2%で、「どちらかというとそう思わない」「そう思わない」は57.0%で、効果に否定的。大都市圏では否定的な意見が多いが、鹿児島県(45.5%)、静岡県(44.9%)、福島県(44.4%)、宮崎県(42.1%)、茨城県(41.7%)、宮城県(40.5%)では肯定的。
シーリングが「診療科の偏在」対策に貢献しているかどうか、「そう思う」「どちらかというとそう思う」は18.9%、「どちらかというとそう思わない」「そう思わない」は62.9%で、否定的。
専攻医が地域に定着する上で重要なことは、上記のほかに、学会に参加しやすい環境、子育て支援策(院内保育、病児保育など)を挙げた。