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医師・医療関係者のみなさまへ

新型インフルエンザ等対策医療従事者研修会

府医ニュース

2025年2月5日 第3098号

新興感染症の動向などを解説

 大阪府医師会は令和6年10月24日午後、6年度「新型インフルエンザ等対策医療従事者研修会」を府医会館とウェブの併用で開催。本研修会は大阪府からの委託により毎年度実施しており、今回は約200人が聴講した。

感染症への平時の備えが大切

 はじめに、司会進行を務めた笠原幹司理事があいさつ。本研修会が、次の新興感染症のパンデミックへの備えについて学ぶ機会になるよう期待を寄せた。
 続いて、朝野和典氏(大阪健康安全基盤研究所理事長)が、「新型インフルエンザをはじめとする新興感染症」と題して講演した。まず、COVID―19の流行動態を解説。オミクロン株以降は、冬と夏の年2回の流行パターンになっており、冬は北海道、夏は沖縄から流行が始まる傾向だとした。また、第1波~第8波での致死率の年代別推移を説明。現在はかなり致死率が低くなってきたが、70歳以上の高齢者などは「リスクが高い」と述べ、ワクチン接種の指標にしてほしいと語った。
 次に、日本の死因で急激に増えている「老衰」に言及。超高齢社会の到来のほか、施設での死亡(看取り)の増加も大きな要因だと指摘した。一方、老衰が必ずしも幸せではないとの考えもあるとし、肺炎など高齢者の治療では個人の意思やQOLを考慮する必要があるとした。加えて、今年流行しているマイコプラズマ肺炎の鑑別・治療を詳述した。
 また、新型インフルエンザ等の動向を説示。近年、鳥インフルエンザ(H5N1)ウイルスは哺乳類にも感染するようになり、ヒトへの感染事例もあるとして注意を促した。こうした状況を踏まえ、フィンランドではH5N1ワクチン接種を開始し、米モデルナではmRNAを活用したワクチン開発が始まると紹介。さらに、MERSの感染状況にも触れた。
 最後に、大阪府での新型インフルエンザ等に備えた医療提供体制を提示。検査体制・確保病床数・発熱外来数などの状況を示し、平時の備えの大切さを伝えた。また、感染対策の基本として、換気の重要性を強調。換気不足の原因の68%は機械換気装置の不備にあると述べ、まずは医療機関や施設の換気状況を確認してほしいと呼びかけた。