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医師・医療関係者のみなさまへ

令和6年度文化講演会

府医ニュース

2025年2月5日 第3098号

杉本昌隆8段が講演

 大阪府医師会・大阪府医師協同組合の共催による令和6年度文化講演会が11月9日午後、同組合本館で開催され、藤井聡太竜王・名人の師匠としても有名な杉本昌隆8段が、「師匠が語る藤井聡太という才能」と題して登壇。会員やその家族、会員医療機関従業員ら130人が参加した。ユーモアを交えた講演に、会場は幾度となく笑いに包まれた。
 冒頭、小谷泰・同組合理事長は、事業への理解と協力に謝意を示した。藤井氏の才能を開花させた杉本氏の講演は、様々な分野に通じると期待を寄せた。
 杉本氏は、世代や立場によって物事の見え方が変わると前置き。藤井氏をはじめ門下生とのやり取りを引き合いに、自身と彼らの「普通」は違うと語った。
 藤井氏が八冠を獲得した当時の冷静な対応を振り返り、「そのような人柄だからこそ今の活躍がある」と分析。現在は七冠となったが、ライバルの存在は素晴らしく、頑張ってほしいとエールを送った。出会った頃の藤井氏は、▽常に疑問を持つ▽俯瞰で見る▽集中力を持続する――ことに優れた少年だったと回顧し、周囲の大人が「大人のテクニック」を教えず、本人の主体性を尊重したことも才能の開花につながったと考察した。
 さらに、藤井氏の技術的なポイントとして、「ひらめき」「読み」「積極性」を提示した。発想は非常にAI的で、最短で勝ちにいく手を正確に読むことができると解説。純粋に将棋が好きだから長考しても疲れないと見立てた。また、不利な時ほど積極的な手を選択するとし、過去の対戦を例に、「まっすぐな人間らしい一手」と評した。
 最後に、杉本氏が若手と接する際の心掛けとして、▽考え過ぎると才能が開花しない▽環境だけ整えて自由にさせる▽弟子が意見しやすい雰囲気づくり――を紹介。世代や考え方が違う集まりが気付きにつながり、気付くことは若い人だけの特権ではないと力を込めた。好きなことをしているからこそ人は輝き、その好きな気持ちを失わせないのが師匠の役割と結んだ。