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府医ニュース
2025年1月15日 第3096号
厚生労働省は令和6年8月29日に「近未来健康活躍社会戦略」を公表し、政府は翌日、正式に閣議決定した。
現在我が国は、少子高齢化・人口減少、医療のデジタル化・グローバル化といった課題に対応し、国民皆保険制度を維持しつつ、医療・介護産業を育成し、人生100年時代を見据え国民が健康で有意義な生活ができる環境整備を図る。目的達成のため、同戦略では、「国内戦略」と「国際戦略」に整理して施策をまとめている。
「国内戦略」は6つの項目からなる。①医療・介護DXのさらなる推進②提供体制の改革(医師偏在対策の推進)③女性・高齢者・外国人の活躍促進④イノベーションを健康づくり・治療に生かす環境整備⑤後発医薬品の安定供給体制の構築⑥創薬イノベーション――である。①は全国医療情報プラットフォームの構築、医療情報の二次利用促進、社会保険診療報酬支払基金を「医療DX推進機構(仮称)」に改組、マイナ保険証の利用促進、生成AI等の医療分野への活用など。②は医師偏在対策であり、国民皆保険制度の下、国民が受ける医療格差の是正を目的。③は女性の社会進出、外国人材の就労環境整備、高齢者が長く活躍できる社会を推進。④は国民の健康・医療に対するニーズの多様化に対し、イノベーションの成果を生かす環境整備の推進。⑤は後発医薬品業界の産業構造改革により、数量シェアや品目ともに多い企業は、生産性や収益性の向上により総合商社型の企業へ成長する。一定の領域で他をリードする領域特化型の企業は、自社の強みを生かした領域に品目を集約し、適切な規模で安定的に供給する。一つの成分についての供給社数は、理想的には5社程度としている。⑥は創薬に関する官民連携の事業を支援し、アカデミアの研究成果を創薬に結びつける。
「国際戦略」は4つの項目からなる。(イ)創薬力の強化による革新的新薬の開発(ロ)アジア圏等における医療・介護の好循環の実現(インバウンド・アウトバウンドの推進等)(ハ)世界の感染症対策を牽引する感染症危機管理体制の構築(二)「UHCナレッジハブ」の日本設置――である。(イ)は日本の革新的なアカデミアの研究成果により創薬に結びつけ我が国の経済を牽引すると同時に、国民に画期的医薬品を提供し、ドラッグ・ラグ/ドラッグ・ロスを解消。(ロ)はアジア諸国やインド太平洋地域における国際貢献とともに、我が国の医療・介護産業の成長・さらなるイノベーションにつなげていく。訪日外国人患者の受け入れ(インバウンド)や医薬品・医療機器の海外展開(アウトバウンド)を推進。(ハ)は7年4月に設置予定の国立健康危機管理研究機構(JIHS)を中心として、感染症の分野において世界をリードする体制を整備。(二)は我が国がUHC(Universal Health Coverage:すべての人が適切な予防、治療、リハビリ等の保健医療サービスを支払い可能な費用で受けられる状態)を長年推進してきたことを踏まえ、WHOや世界銀行等の国際機関と連携して、途上国におけるUHC達成のためのデータ整備や人材育成を行う世界的な拠点「UHCナレッジハブ」を東京に設置する。日本の国際貢献の一つである。