TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ
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府医ニュース
2024年12月25日 第3094号
大阪府医師会は10月12日午後、府医会館で令和6年度かかりつけ医認知症対応力向上研修を開催。かかりつけ医を中心に約140人が参加した。
開会あいさつで前川たかし理事は、急速な高齢化により、認知症患者やその予備軍の増加を指摘。医療・介護だけでなく生活支援へのニーズも高まると見通し、かかりつけ医を中心とした多職種のさらなる連携強化が求められると述べた。そして、本研修会が地域における多職種連携の推進への一助になればと期待を寄せた。
講演では、まず、松本一生氏(松本診療所院長)が、「基本知識編」として認知症の基本的な知識・診断の原則を解説。認知症とは、「一度正常に発達した認知機能が後天的な脳の障害によって持続的に低下し、日常生活や社会生活に支障を来す状態」と定義し、その原因疾患や有病率、症状などについて説明を加えた。また、認知症と鑑別すべき状態や疾患として、▽せん妄▽うつ病▽薬剤による認知機能の低下▽アルコール関連障害――などを列挙。鑑別に必要な検査や専門医に紹介すべき事例を示した。
続いて、「診療における実践編」として、河原田洋次郎氏(大阪市立弘済院附属病院精神神経科部長)が登壇。認知症は早期発見・早期治療によって、進行を遅らせることができるほか、将来のことを考える時間が持て、希望の生き方を全うすることができると訴えた。その上で、問診時の留意点や見当識障害、判断・実行機能障害のアセスメントを説示したほか、薬物治療について詳述。さらに、5年12月に保険収載された「レカネマブ」に触れ、最適使用推進ガイドラインを示しつつ、投与の注意点を伝えた。
「かかりつけ医の役割編」では、塚本雅子氏(サギス中クリニック院長)が、認知症患者とその家族を支えるため、かかりつけ医に求められる役割を語った。塚本氏は、かかりつけ医が早期段階での発見・気付き役になることが重要であり、専門医との連携構築を行い、チームアプローチのコーディネーターを担うことも必要と強調。また、地域の認知症サポート医を把握しておくことも有用であると述べたほか、主治医意見書の重要性についても言及した。
最後に、中西亜紀氏(大阪公立大学大学院生活科学研究科)が、「地域・生活における実践編」を説示。中西氏は、認知症施策のこれまでの主な取り組みを挙げ、6年1月に認知症施策推進本部が設立されるなど、認知症になっても尊厳を保持しつつ希望を持って暮らすことができる社会への歩みを着実に進めていると力を込めた。そのほか、すべての市町村に設置されている「認知症初期集中支援チーム」や意思決定支援などのサポート体制を示し、「認知症の人や家族の視点に立った切れ目のない支援が求められる」と締めくくった。