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時事
府医ニュース
2024年12月25日 第3094号
11月29日、福岡資麿・厚生労働大臣が省令(官報号外277号)にて、感染症法上の位置付けをしていなかった風邪症候群を5類感染症に変更することを決定した。来春4月より施行される。
5月27日、第85回厚生科学審議会感染症部会はARI(急性呼吸器感染症)に関して国内で主に上・下気道炎を呈して発生がみられる以下の疾患、▽インフルエンザ(定点)▽COVID―19(定点)▽RSウイルス感染症(定点)▽咽頭結膜熱(定点)▽ヘルパンギーナ(定点)▽A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(定点)▽百日咳(全数)▽クラミジア肺炎(基幹定点)▽マイコプラズマ肺炎(基幹定点)▽レジオネラ肺炎(全数)▽オウム病(全数)――を特定感染症予防指針の対象とすることとし、続く7月8日、第86回の部会ではARIを5類感染症に追加することが提案された。
これらはWHOにより「症候群ベースの定点サーベイランス」が推奨されたことに呼応するためなされた流れであるが、WHOの症例定義である「38.5度以上の発熱を伴う」こととは異なり、ARIの症例定義に「発熱の有無を問わない」とされた。
未知の新興感染症パンデミックをいち早く把握するためのサーべイランスであるが、7月26日、武見敬三・厚労大臣(当時)が初めて会見で「風邪」という言葉を使用し、11月29日のパブリックコメントにて公式に「風邪」が5類に含まれると言及された。未知の新興感染症の早期把握はワクチン製造に有用であるが、この「風邪を5類に」というアナウンスはメディアやインターネット上で「風邪のワクチン」製造への道筋だと揶揄や曲解された文言もすでに見受けられている。
発熱の有無を問わないことで報告症例数は膨大となり、定点医療機関の負担増が懸念される。また早期の医療DXによるサーベイランスシステムを望む声が大きくなることも容易に予想できる。
厚労省と医師会は、医療機関と国民に対して本改正の目的と正しい理解の説明をすべきであろう。(隆)