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府医ニュース
2024年12月18日 第3093号
高石市医師会(矢田克嗣会長)は10月26日、アプラホールにて「ヒアリングフレイル講演会」を開催した。「ヒアリングフレイル」とは、聴覚機能の低下によりコミュニケーションに問題が生じ、QOLの低下を含む身体の衰えを示す概念である(ユニバーサル・サウンドデザイン㈱が商標登録している)。
講演に先立ち、池上彰弘・高石市耳鼻咽喉科医会代表世話人があいさつ。難聴を自覚したらまず耳鼻科を受診することが重要であり、「耳垢や中耳炎などが原因の場合、治療で聴力を改善することができる」と述べた。また、補聴器が必要な場合は、聴力検査の結果に基づいて個々に合わせた調整が大切であることを強調した。
続いて、大阪大学耳鼻咽喉科で難聴グループを率いる太田有美准教授が「高齢者のきこえと健康」と題して講演を行った。太田氏は、高齢者において難聴が社会的活動の低下を招き、引きこもりがちになること、また孤立から鬱状態になりやすく、認知機能の低下や認知症のリスクが高まることを解説。さらに、「きこえの仕組み」や高齢者の増加に伴う難聴者の増加についても説明し、中耳炎や人工内耳の手術、埋め込み型補聴器などの治療法を紹介した。太田氏は、難聴が認知症の原因の一つであり、難聴を放置せずに耳鼻科を受診して治療を行うことで、認知症の進行を抑えられる可能性があることを強調した。日本では欧米に比べて自分の難聴を自覚していない人が多く、補聴器が必要であるのに装用していない人が多数を占めている現状である。加齢性の難聴であっても補聴器を適切に使用することで、聴覚の衰えに対処し、健康で楽しく過ごせるようにしてほしいと締めくくった。
講演終了後、石倉三郎主演の短編映画「気づかなくてごめんね」が上映された。この映画は、難聴のためデイサービスでの会話が難しく、認知症と誤解され、本人も周囲から馬鹿にされていると感じることでイライラしてトラブルになる高齢者の様子を描いている。具体的な場面を通して難聴が日常生活に与える影響を理解する助けとなった。参加者の一人は「難聴対策が認知症予防につながることを初めて知り、大変勉強になった」と感想を述べた。
今回の講演会は、高齢者の聴力問題に対する理解を深め、地域社会でのサポートの重要性を再認識するために企画された。今後も、こうした機会を通じて耳の健康への意識を高めていく予定である。
報告 高石市医師会