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医師・医療関係者のみなさまへ
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府医ニュース
2024年12月4日 第3092号
政令指定都市医師会などで構成される「十四大都市医師会連絡協議会」が10月19・20日の両日、横浜市医師会の主務で開催された。3つの分科会のほか特別講演などが行われ、都市部における医師会の役割などを協議した。
初日の午前には会長会議や総務担当理事者会議などが行われた。午後の全体会議では、戸塚武和・横浜市医師会長が開会あいさつ。能登半島地震における有事対応や4月のトリプル改定による医業経営への多大な影響などに触れた。その上で、各都市共通の課題として情報を共有し、本協議会での討議の成果を今後の国民医療の充実・向上につなげたいと述べた。
引き続き、3会場に分かれて分科会を実施。終了後に懇親会が開かれ、松本吉郎・日本医師会長をはじめ、自見はなこ・参議院議員や釜萢敏・日医副会長らが祝辞を述べた。
第1分科会では、主務地である横浜市医師会の取り組みを軸に各医師会の好事例を共有した。日常業務のデジタル化は、医師の負担軽減や入会促進など会員のメリットも期待される。同市医師会では、ウェブデータベース型の業務アプリ構築クラウドサービスを活用し、役職員の業務のデジタル化が進む。その一例が紹介されたほか、各医師会からは災害時の安否確認システム、研修会等での運用、委託事業でのDXなどを報告。デジタル化への課題も認識した。大阪府医師会からは清水智之理事が、クラウド型プラットフォーム導入に係る費用などを質問した。
第2分科会では、6つのテーマに分けて協議。府医からは森口久子理事が、「児童生徒の心のケア――関係機関との連携の手引きについて」と題し、不登校など児童生徒のメンタルヘルスに関する医師会活動を解説した。本分科会で示された課題を各都市に持ち帰り行政との連携に役立てるとともに、児童生徒・教員の健康を支えるため、必要な対処を政府や行政に提案していきたいと締めくくった。
第3分科会では、3部に分けて意見交換を行った。府医からは宮川松剛副会長が、令和6年能登半島地震におけるJMAT大阪の活動について報告。ロジスティクス機能をしっかり構築し、サポート体制を充実させることや、新しいツールの利活用の重要性を主張した。本協議会のネットワークを生かした相互支援システムの確立が大都市における災害に有用と結んだ。
2日目には、2題の特別講演が行われた。まず、「医師偏在、診療科偏在も含めた医師会を取り巻く未来の予測と今後の方針」について、松本・日医会長が登壇した。令和7年度から始まるかかりつけ医機能報告と、病床機能報告や外来機能報告との違いを解説。十分に理解して対応するよう促した。また、医師少数地域への日医による支援などに触れ、各年齢層の医師が分担し、あらゆる施策を組み合わせて偏在を解消していくことが必要との見解を示した。
引き続き、襟川陽一氏(㈱コーエーテクモホールディングス代表取締役社長)が「シブサワ・コウのゲーム開発」と題して講演した。
襟川氏は、「創造と貢献」の精神を核に経営の基本方針である①最高のコンテンツの創発②成長性と収益性の実現③社員の福祉の向上④新分野への挑戦――を解説。新しいゲーム開発への着想や品質・納期・予算のマネジメントの大切さ、優れた人材を生み出す仕組みなどを、自身の経験を交えて伝えた。
閉会式では、次回の主務地となる京都市へと引き継がれ、盛会裏に終わった。
政府は、社会保障費の増加を抑えることを目的として、診療所の経常利益率が高いという恣意的なデータを根拠に、2024年度診療報酬改定は実質マイナス改定となった。さらに、人件費のベースアップ、公共料金・医療資材の高騰を価格に転嫁できない医療機関は、医療提供体制の崩壊につながることを実感するに至っている。
十四大都市医師会連絡協議会は、国民の医療を支える社会保障制度を、財政的な観点だけではなく、医療現場での視点を考察したうえで、政府に対して以下の要望を決議する。
記
一、社会保障制度において、財政の観点から、「自然増分しか認めない」「対GDP比で医療費の総額を定める」とする方針に対し、物価・職員の人件費高騰、DX導入・維持に関するコストの上昇、控除対象外消費税などの負担分は、公定価格となっている診療報酬と分離して考えることを提案する。
一、全世代型社会保障に移行し、持続可能な保険制度の構築を検討すべきである。そのため、社会保障費の削減ではなく、新たな財源の確保について提案する。
一、政府が混合診療と保険外併用療養費の意味を国民に正しく伝え、国民皆保険制度を堅持するよう導くことを提案する。
一、医師の働き方改革後の、夜間・休日を含めた救急体制への影響を分析し、医師の健康確保と地域医療の実情に合った方向性を提示するとともに国民に説明することを提案する。
一、日本の医療は、地域を面で支えることで、通常の医療も維持しながら新型コロナウイルス感染症に対応し、死亡率は欧米に比べて格段に低く抑えることができた。我々が培ってきた、面で支える医療が、かかりつけ医の基本の形であることを官民ともに認識することを提案する。
一、現場における医薬品供給不足は、薬価引き下げ、スイッチOTC化等の政策による影響が大きいことを、政府が国民に説明することを提案する。
一、リフィル処方箋は、患者の健康管理に問題が生じる可能性が高い。また、薬剤師による調剤の可否の判断は、その資格に付与された権限を逸脱しており、廃止することを提案する。
一、学校健診において、児童・生徒のプライバシー保護の主張のみが拡散され、健診の質を維持できなくなっている。これに対して、医師会は、学校健診の意義と健診時の異常を見落とさないための必要な条件について、児童・生徒・保護者に啓発している。政府にもこの啓発を担うことを提案する。
令和6年10月20日
第63回十四大都市医師会連絡協議会