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医師・医療関係者のみなさまへ

本日休診

トコジラミかゴキブリか良く考えてみよう

府医ニュース

2024年11月20日 第3090号

 疥癬はチョクチョク診るが、シラミとは少し疎遠になっていた。結核病院に勤めていた頃、救急車で運ばれてきた行き倒れが、シラミまみれになっていたのは昭和レトロだ。
 この夏は暑かった。それにインバウンドも影響しているらしいが、さる老健施設に行った時、トコジラミの大発生に遭遇した。トコジラミ? すぐに8本足を想像したが、いやいやダニではない、ポールダンスをするケジラミでもない。あの南京虫なのである。その施設では1部屋30万円もかけて駆除中だそうだが、その割には駆除しきれていないようである。敵も然る者、バルサンを焚くと他の部屋に逃げイタチごっこというわけで、とにかく1部屋ごとに、何か知らない殺虫剤で『完全駆除』していくのだそうだ。しかし完全駆除できていないということは、秘密の扉があるのだろう。実際薬で駆除しても、数が多い時は必ず生き残る運の良い個体もあるし、秘密の扉は家外に通じていることもある。
 飲食店街の道路など、必ずと言ってよいほどゴキブリが歩いている。それならばと南京虫の天敵を調べたところ、ヤモリやクモが紹介されていた。えー、我が家のペットではないか。さすがにムカデは噛まれたことがあるので親しみは持っていないが、ヤモリやクモに噛まれたことは一度もない。噛み付くのが本業の虫は、強い敵に噛み付けば、負けて食われてしまうことぐらい充分心得ている。彼らは無駄な戦いは挑まない。ただ捕まえようとすると、自己防衛本能で噛みついてくるから痛いのである。それを女性の医療関係者に進言すると、『いやーん』と言われた。
 最近の建物は一戸建てにしろマンションにしろ、空調の関係からか密室性があり、外部から遮断されている。一旦南京虫の侵入を許してしまうと、大爆発を阻止する天敵はいない。南京虫はノソノソ歩くから、素早い動きのクモやヤモリの格好のターゲットだろう。その卵は80度で駆除しないといけないと聞いたが、アリやゴキブリの好物だそうである。しかし最近ゴキブリと遭遇しないのは、ヤモリやクモが頑張っているからだろうか。害虫の駆除には関心はあっても、生態ピラミッドまで考えは回らないから、つい頂点に君臨する『いやーん』など追い払ってしまう。(晴)