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府医ニュース
2024年11月6日 第3089号
やりきれない暑さをしのいで、ようやくほっとする秋がきた。積読の本にも、やっと手を伸ばそうという気持ちになる。読書の秋。秋の燈は、少し真面目な印象がある。勉学や夜業に勤しむような、また、物思いをするにも、人生とは何かなど深遠で粛然と思い致すような。
「読書は、自分に出会うための旅である」。高校時代、国語の授業で習った言葉だ。遠くの世界で何が起こっているか、街並みや広大な大地、海原、海底、宇宙、過去も未来も、空間や時間さえ自在の旅だ。ただ、遠くへ遠くへと追い求めているうちに、自分が何者であるかが分からなくなることがある。だから、常に、現在自分が居るこの場所を意識しておかないといけない。
当時の教室の光景と合わせて思い出すのだが、その時きまって、次の2つも芋づる式に思い浮かぶ。ノヴァーリス『青い花』にある「旅とは自分がいた場所に帰ってくる営みだ」という一節と、八木重吉の詩集『秋の瞳』に収集された「心よ」だ。ノヴァーリスは18世紀ドイツの作家で、八木重吉は大正から昭和前期の詩人。同じ時期に聴いたのではないかもしれないものが、連携した記憶となっている。
心よ
こころよ
では いつておいで
しかし
また もどつておいでね
やつぱり
ここが いいのだに
こころよ
では 行つておいで
10月26日は、大正から昭和時代前期の詩人・八木重吉の忌日「茶の花忌」だ。白い茶の花が咲く時期に由来する。
この秋、読書という旅に出られてはいかがだろうか。(颯)