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時事

難病・小慢医療費助成における医療DX

府医ニュース

2024年10月30日 第3088号

厚労省が将来像を提示

 10月15日、厚生科学審議会・疾病対策部会「難病対策委員会」と社会保障審議会・小児慢性特定疾病対策部会「小児慢性特定疾病(以下、小慢)対策委員会」の合同会議が開催され、医療DXによる難病・小慢医療費助成の将来像が示された。
 (1)申請手続きの電子化:まずは、自治体への申請・届出をマイナポータルから行える「ぴったりサービス」に、難病等医療費支給認定申請を追加する。今年度中に希望する自治体から運用開始できるよう、デジタル庁と調整中である。ただしこの方式では、申請可能データは最大10メガバイトで、それを超える書類は郵送等が必要になり、オンライン方式では完結できない。そのため、マイナポータルの自己情報取得機能を活用した新たなアプリケーションを構築し、令和8年度以降開始できるよう調整する。さらに各自治体が自システムとの自動連携等、より効率的な作業ができるよう、民間企業と連携して独自アプリケーションを開発する際の技術的助言も行う(7年度以降に希望する自治体で運用開始)。
 ちなみに、医師が作成する臨床調査個人票および医療意見書のオンライン登録は、小慢については昨年10月から、難病は今年4月から、すでに始められている。
 (2)オンライン資格確認と上限額管理票の電子化:マイナンバーカード1枚で医療機関の受診を可能とする。現在は先行的に実施する自治体の公募を行っており、今年度までの採択は、大阪府を含む累計47自治体となっている(難病20、小慢27)。また、登録者証の情報と医療費情報を電子的に確認する仕組みの導入により、医療受給者証が交付されていない指定難病患者が軽症高額者へ該当した場合に、円滑に受給者証を交付できるようにする。これらには法改正および電子化の方法の検討が必要なため、8年度以降の全国的な運用を目指す。
 (3)二次利用:同意が得られた診断書情報を国が管理する難病等データベース(以下、DB)に登録する。今年度から法定化され、民間事業者を含む幅広い主体に対して、審査委員会による審査を経た上で、匿名化した形での第三者提供(他DBとの連結提供も含む)が可能となっている。登録対象者が拡大され、軽症の指定難病患者もデータ登録できる。今後は審査を大幅に短縮し、迅速に提供可能なデータセットとしての運用を進めていく。
 さらに、現行の匿名化情報では、元データに復元できない形とすることが必要なため、追加データの取得・解析ができず、特異な値や病名なども削除・改変されることから、より精緻な分析が行えるよう、医療領域のデータ変更を要しない「仮名化情報」の提供を可能とする方針が出された。一定の保護措置を定め、他の公的および次世代医療基盤法に基づく認定作成事業者のDBや、新たに構築する電子カルテ情報DBとの連結解析も可能とする。今後検討を重ね8年度以降、法改正後の提供開始が計画されている。
 IT化の推進には、便利な将来像を示すこと、便利を実感できることが決定的に重要だが、このプランは各々の当事者にどう映るだろうか。(学)