TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ
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府医ニュース
2024年10月30日 第3088号
10月16日午後7時40分、中尾正俊・現大阪府医師会長がお亡くなりになりました。71歳でした。今年6月に府医会長に就任後、「地域医療体制の充実」「丁寧な医療DXの提案」「広報部門の強化」「風通しの良い組織運営」を会務運営の4つの柱とし、精力的に会務を遂行されました。心よりご冥福をお祈りいたします。
9月11日に開催された第1回医療問題研究委員会での講演が、中尾会長の最後の講演となった。本委員会は平成10年に発足。若手医師が医療に関する諸問題を討議し、府医執行部がその意見を吸収しながら将来の医師会を担う人材を育成する場となっている。当日は、郡市区医師会などから選出された委員ら46人が出席した。
中尾会長は開会あいさつで、日本の医療がより良い方向に進む礎となるよう活発な議論を要請。委員会を通じて積んだ研鑽を医師会活動に役立ててほしいと呼びかけた。
次いで、司会を務める栗山隆信理事から委員会の進め方を説明。任期前半は講義形式で医療界の動向や医師会の主張に理解を深め、後半はグループごとにプレゼンテーションを行う旨が伝えられた。
講演では、中尾会長が、「医療制度史から見た我が国の医療の現状」と題し、日本の医療の現状や保険診療、今後の医療を巡る課題など総論的な観点から話題提供をした。
まず、江戸時代に伝来した西洋医学の源流から、大日本医師会設立までの歩みを概説。その上で、国民に信頼される医療を確立するには、医師自らが国民に対して医師と医療の質を保証する体制構築が重要だとし、それが学術・専門職能団体として医師会の果たす役割だと語った。加えて、府医の取り組みとして、7月に第11波を迎えた新型コロナウイルス感染症に関する現場アンケート調査を紹介。医療物資の不足状況やワクチン接種の取り扱い、対応困難事例などが報告された。
続いて、日本の医療制度や保険診療などを解説。①国民皆保険②現物給付③フリーアクセス――を特徴とし、その結果、世界一の長寿国で、低い乳児死亡率の実現に貢献しているとの見解を示した。
かかりつけ医機能が発揮される制度整備についても触れた。中尾会長は、平時から有事に備え、医療機能情報提供制度を国民が活用しやすいものにすることが大切だと強調。複数の医師をはじめとする医療従事者や医療機関が、「地域を面として支える」「積極的に参加できる」「役目に応じた研鑽を重ねる」重要性を説いた。
さらに、2025年に向けた地域医療構想に言及。現在、地域特性に応じた病床機能の転換や再編等が進められており、大阪府では「大阪アプローチ」により医療実態データや病院プランなどを共有し、医療機関の自主的な病床機能の分化・連携を支援していると詳説した。また、生産年齢人口が減少し、85歳以上の割合が増える2040年を見据えた「新たな地域医療構想」を取り上げ、令和9年度からの取り組みに向けて今秋に出される中間まとめに関して、地域医療をいかに展開していくべきか考えながら注視するよう促した。
そのほか、医師の働き方改革や医療DXなど多岐にわたり話題提供がなされ、次世代にどのような医療を引き継ぐか、ともに考えていきたいと結んだ。
中尾会長の講演を受け、委員から▽政治家が示す高齢者の医療費負担に対する主張への向き合い方▽医療におけるコストカットの考え方▽医療DX化に伴うランニングコスト等の支援▽今後の医療費増加と診療報酬の引き下げ――に関して質問。中尾会長が考えを示した。