TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ
TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ
時の話題
府医ニュース
2024年10月16日 第3087号
移植医療は、非常に有効な医療の一つだろう。1995年4月に日本腎臓移植ネットワークが発足、97年10月16日には心臓と肝臓の移植希望者登録も始まり、日本臓器移植ネットワーク(以下、JOT)に改組、同時に臓器移植法が施行された。その後、98年5月に肺、99年3月に膵臓、2000年に小腸移植希望者の登録が開始された。脳死下の臓器提供が可能で、本人の書面による意思表示と家族の承諾が必要であった。民法上の遺言可能年齢に準じて15歳以上の脳死患者からの臓器提供であり、15歳未満の小児への臓器移植は不可能とされた。そのため、多額の寄付金を募り、米国やドイツなどの海外で臓器移植を希望して渡航した患者は少なくとも112人いる(JOTホームページのデータ:23年4月30日時点)。
08年、国際移植学会はイスタンブール宣言を採択した。①臓器売買の根絶②原則、臓器提供の自給自足③法制化と医療環境の整備、ドナーに対するケア――を内容とする。
10年1月17日、臓器移植の「親族への優先提供意思表示」を書面で示すことができるようになった。同年7月17日、改正臓器移植法が施行され、本人の拒否の意思表示がない限り、本人の意思が不明であっても家族の承諾があれば、脳死下の臓器提供が可能になった。それにより、15歳未満であっても、生前の拒否の意思がない限り、家族の承諾で移植が可能になった。
IRODaT(International Registry on Organ Donation and Transplantation)の21年の人口100万人あたりの臓器提供数は、アメリカ(41.6)、スペイン(40.8)、韓国(8.56)、日本(0.62)例であり、日本の少なさは際立つ。海外と日本の臓器移植に関する制度の違いは、アメリカは「臓器提供に関する意思表示の義務(州の法律)」であり、スペイン・フランス・イギリスは「提供しない意思を示さない限り臓器提供の対象」とする点である。
日本は「本人の意思表示と家族の承諾」を要件とする。また内閣府「移植医療に関する世論調査」(21年)によれば、「提供したい」(39.5%)、「どちらともいえない」(35.8%)、「提供したくない」(24.3%)であり、啓発活動により、韓国程度には増えることも想定される。23年のJOTへの移植希望患者の登録数は1万5517人。最近10年の年間移植数は100件前後で推移し、待機中に死亡する患者は300~450人ほどになる。1週間に8人が死亡する計算になる。
野党のある議員は、ドナーが大きく不足している事態を重く見て、「患者が脳死と判断される蓋然性が高い場合は、ドナーになることを家族に提案し、患者の情報をJOTに届け出ることを医療機関に義務化すべき」と提言している。現場の医療関係者の負担が大きいことから、法改正とともに診療報酬で評価をすべきと提言している。当面は特定機能病院に限る案が考えられる。