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医師・医療関係者のみなさまへ

近医連定時委員総会 分科会報告(概要)

府医ニュース

2024年10月2日 第3086号

第1分科会/医療保険・介護保険
診療報酬・介護報酬改定を評価

 第1分科会(医療保険・介護保険)では、冒頭で委員総会に上程する決議案を承認した。続いて、城守国斗・日本医師会常任理事が中央情勢を報告。ベースアップ評価料の届出を改めて促した。また、令和6年度診療報酬改定では、財務省が実施した機動的調査の結果を恣意的に利用されたとし、8年度の診療報酬改定に向けては日医総研を通じて経営実態調査を行う意向を示した。
 次いで、6年度診療報酬・介護報酬同時改定に対する評価や問題点について、事前アンケートに基づいて各府県が意見交換。届出や算定のしづらさ、実態に見合わない施設基準に対する改善のほか、医薬品を巡る医師の処方権や裁量権を危ぶむ声が多く挙がった。
 6年度診療報酬改定に係る諸課題を協議した。大阪府医師会からは永濵要理事が、▽基本診療料の引き上げや補助金により賃金が引き上げられるべき▽医療費削減を目的としたさらなる管理料の再編の可能性▽医療DX化における政府の費用面・安全面での支援▽地域包括医療病棟の施設基準の高さ▽リフィル処方箋での薬剤師による調剤の可否判断▽選定療養化による長期収載品の自己負担増――など課題を指摘。現場に即した配慮・改善のほか、改定過程における中医協の役割・機能が形骸化しないよう求めた。
 同時改定における医療介護連携の評価については、府医からは前川たかし理事が発言。介護保険施設等連携往診加算の新設に一定の評価をした上で、医師の負担の大きさから施設基準の緩和を主張。地域包括診療加算等の算定要件の見直しには、「ケアマネジャーの質や知識の向上」と「ICTツール使用の体制構築」を推進することがポイントだとした。
 意見交換後の城守・日医常任理事への質問では、永濵理事が一部のケアマネジャーがかかりつけ医と患者の分断を図ろうとする事例を引き合いに、在宅医療に必要な連携を担う拠点において、ケアマネジャーの質の向上への関与の可否を確認。城守・日医常任理事は、一定程度の質の向上に向けて要望したいと述べた。

第2分科会/感染症対策
災害時の感染症対策などを協議

 第2分科会(感染症対策)では、①新型コロナウイルス感染症パンデミック――フェーズ毎に振り返る、各都道府県の問題点②令和6年能登半島地震の経験から考える自然災害時の感染症対策――について、事前アンケートに基づき協議を行った。まず、新型コロナ対策における成功事例や課題となった点について、各府県より報告がなされた。府医からは、宮川松剛副会長が発言。大学や関係団体から構成する専門家会議を府医に設置し、協議を重ねて対応した点を成果に挙げた。また、宿泊療養施設での医療サポートでは、病院協会の協力を得て、常に医療サポートを受けられる体制を確保できたと説明。希望者が入所できない事態は生じなかったと強調した。一方で、大阪府の本部会議では、専門家は書面で意見表明を行っていたため、医療側の意見が十分に反映されていたのか不透明な面があると振り返った。
 続いて、改正感染症法に基づく医療措置協定の進捗状況が示された。和歌山県、滋賀県、奈良県は「個別契約」、京都府、兵庫県は「集合契約」としており、大阪府は個別契約と府医が取りまとめを行う集合契約の2パターンとなる。宮川副会長は、国のガイドラインに未記載の▽要請を行う際の前提条件▽解約▽損害補償――など、独自項目を盛り込んだ協定書を大阪府と締結している旨を報告した。
 自然災害時の感染症対策では、避難所における感染対策が議題となった。宮川副会長は、JMATで被災地入りする際に、検査キットと治療薬を持参し、クラスターを防ぐことが重要であると指摘。また、派遣医師は感染対策研修を受講していることが望ましいと語った。さらに、鍬方安行理事は平成30年に発生した大阪北部地震を振り返り、大阪府が主導し実施している災害時対応が想定した形で進められたと回顧。中長期にわたる避難所の運営や感染症対策を取り入れたJMAT研修が今後の課題と述べたほか、DHEATとの連携も進める必要があるとした。
 最後に笹本洋一・日医常任理事が総括。有意義な議論に謝意を表した。政府においても「内閣感染症危機管理統括省」が設立され、来年4月には日本版CDCに相当する「国立健康危機管理研究機構」が発足すると明かし、感染症危機管理における情報の統括や組織の強化に期待を寄せた。

第3分科会/医療情報
医療DXは適切に進めることが大切

 第3分科会(医療情報)では、①オンライン資格確認②電子処方箋③電子カルテ情報共有サービス④会員医療機関がDXを進めるにあたっての支援⑤地域医療情報連携ネットワーク⑥医療DXの問題点――を協議した。
 事前アンケートに基づき、各府県がそれぞれの見解を説明した。オンライン資格確認ではマイナ保険証利用率向上への対策や保守費用等を話し合った。全体的にはマイナ保険証自体のメリットの薄さを指摘する声や、費用負担は国が責任を持つべきとの意見が多く見られた。府医からは清水智之理事が発言。マイナ保険証の利用に対するインセンティブ導入や、コストについて医師会による行政への働きかけを訴えたほか、高齢者など適応が難しい利用者を免除する措置が必要と指摘した。
 DXに関する会員の支援では、過疎地域と都市部などの地域性が指摘された。また、セキュリティに懸念を抱く会員も多く、保険やサポート制度などの充実が求められた。そのほか、会員同士の交流会や勉強会を定期的に開催し、相互に意識を高めることも有用だとの声もあった。高齢やITに不慣れなためDXに対応できない会員への支援にも話題が及んだ。清水理事からは、▽初歩的な研修の提供▽簡素化されたインターフェースの導入▽医師協同組合を通じた民間団体へのあっせん――などの案が示された。加えて、府医医療情報委員会で「郡市区等医師会のICT化」を調査した結果を報告。事務職員においても苦手意識があり、費用面とも相まって対応が遅れている側面もあるとし、専門人材の確保などの必要性を挙げた。

地域医療を崩壊させないよう活動

 総括では、坂本泰三・日医常任理事が費用負担の軽減ができるよう努めたいとの方針を示した。あわせて、将来を見据えて適切に進めることが重要だと強調。拙速に進めるのではなく、日医としてもゆっくり、丁寧に進めていくと述べた。茂松茂人・日医副会長は、「DXによって日本の医療、地域医療を壊してはならない」と言明。この考えを忘れず日医として活動していくと結んだ。