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時事
府医ニュース
2024年10月2日 第3086号
本年10月から、医療DX推進体制整備加算に施設基準の7項目のうち経過措置であった「マイナ保険証利用率の実績」が要件に盛り込まれることとなった。9月までは月1回初診時に限り8点であった同加算も、マイナ保険証の利用率に応じて、〈加算1〉利用率15%以上で11点、〈加算2〉利用率10%以上で10点、〈加算3〉利用率5%以上で8点、と算定が3つに分類される。さらに、令和7年1月からは、それぞれの算定条件が利用率30%以上、20%以上、10%以上に変更される予定。なお、加算1、2は「マイナポータルの医療情報等に基づき、患者からの健康管理に係る相談に応じる」という条件が新設されている。
一方、厚生労働省は、8月の社会保障審議会医療保険部会において、利用率が著しく低い医療機関や薬局に対して地方厚生局が個別に状況を確認する方針を示した。特に、マイナ保険証の利用実績が低い医療機関については、「患者が『マイナ保険証』を使用する機会を奪っている可能性があり、その場合は療養担当規則に違反する恐れがある」と指摘している。これらの医療機関には地方厚生局が個別に事情を確認するなどの対応を行い、その働きかけの対象となることについては、メール等で個別に医療機関に事前に周知するとされている。
城守国斗・日本医師会常任理事は「医療機関から見るとやや威圧的な表現に見え、かえって反発を招くのではないか。地域によって事情が異なることもあると思うので、そういった背景も勘案を」と指摘した。
資格確認システムを受付に設置し、常時マイナ保険証での受付を可能としていながら、5%以下の利用率に留まる医療機関は存在する。患者の選択の自由を尊重した結果を医療機関に法律違反の疑いをかけられてはたまらない。冬の感染症対応でスタッフが多忙な中、厚生局からの調査に協力するのは大きな負担となるだろう。
マイナ保険証利用率の実績を算定要件とするインセンティブと、利用率が低い医療機関への罰則を示唆する方針により、多くの医療機関では、今まで以上にマイナカード利用に対して積極的な声掛けが予想される。しかし、マイナカードの取得は任意であり、保険診療において未取得者にマイナ保険証の提示を強制することには注意が必要である。
さらに、政府は未取得者に対して、マイナ保険証を持たない人に資格確認書を一律に配布する方針を示しており、未取得者が平等に医療サービスを受けられるようにしている。いずれにせよ、保険証廃止による混乱が起きぬよう現場はまだまだ気が抜けない。(葵)