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医師・医療関係者のみなさまへ

近医連定時委員総会

府医ニュース

2024年10月2日 第3086号

医療巡る課題を協議

 近畿医師会連合(今期委員長=安東範明・奈良県医師会長)は9月8日、奈良市内のホテルで令和6年度定時委員総会を開催した。午前には常任委員会のほか、「医療保険・介護保険」「感染症対策」「医療情報」に関する分科会を実施し、意見を交わした。また、全体の委員総会では、十分な社会保障財源の確保や地域別診療報酬議論の即時撤回など8項目の決議を採択した。

 午後からは委員総会が行われた。あいさつに立った安東委員長は、前回、奈良県が主務地を務めた際に「地域別診療報酬」が話題に挙がったと回顧。近医連でメインテーマに掲げ、一致団結して反対し、阻止できたと振り返った。一方で、財政制度等審議会「春の建議」では医師の偏在対策として再び「地域別診療報酬」が取りざたされたと不満をあらわにし、「単価の引き下げで解決する問題ではない」と断じた。その上で、医師の充足数は機能ごとに検証し、逆に医師不足は多面的に議論すべきだとの考えを示した。その後、午前中に開かれた分科会を総括し、活発な議論に謝辞を述べるとともに、議案について慎重な審議を促した。
 続いて、前期主務地の髙橋健太郎・滋賀県医師会長が登壇。前回はポストコロナでの開催ができ、今回も顔の見える形でバトンタッチできたと感謝した。
 その後、令和6年度役員を報告。中尾正俊・大阪府医師会長は常任委員に就任した。各役員の任期は7年6月30日まで。
 引き続き、来賓として松本吉郎・日本医師会長、山下真・奈良県知事、仲川元庸・奈良市長(鈴木千恵美副市長代読)より祝辞が述べられた。松本・日医会長は祝辞の中で医師の偏在対策に言及。「一つの方法で解決できる魔法の杖はない」と主張し、地域の声に耳を傾けながら議論を進めるべきだと説いた。さらに財務省の医療費削減政策を批判し、「地域別診療報酬は言語道断」と切り捨てた。また、ベースアップ評価料に触れ、次期診療報酬改定に向けても多くの医療機関で算定してほしいと訴えた。

報告・議事

 5年度近医連会務報告が兵庫県医師会よりなされ、議事に移った。5年度歳入歳出決算および6年度事業計画・歳入歳出予算が審議され、いずれも賛成多数で承認された。
 さらに、第1分科会で検討された決議が提案され、満場一致で採択した。

令和6年度近医連役員

【委員長】
安東 範明・奈良県医師会長
【副委員長】
平石 英三・和歌山県医師会長
友岡 俊夫・奈良県医師会副会長
【常任委員】
中尾 正俊・大阪府医師会長
八田 昌樹・兵庫県医師会長
【監事】
松井 道宣・京都府医師会長
髙橋健太郎・滋賀県医師会長

決 議

 財務省の財政制度等審議会「春の建議」(令和6年5月21日)では、「歳出の目安」として、社会保障関係費を高齢化による増加分に相当する伸びにおさめる歳出改革を継続することが示されているほか、地域別診療報酬の活用、新規開業規制に関する検討の必要性および医薬品の保険給付範囲見直し等が提言されている。
 政府の「経済財政運営と改革の基本方針2024(骨太の方針2024)」では、「歳出の目安」に関し、「経済・物価動向等に配慮しながら、各年度の予算編成過程において検討する」との文言が盛り込まれたことは一定の評価をするものの、地域別診療報酬を想起する「経済的インセンティブによる医師偏在是正」をはじめ、セルフメディケーションやリフィル処方活用推進等の記載がある。更に、子ども・子育て支援金制度の財源を社会保障の削減と公的医療保険料に上乗せで徴収する支援金とされており、あらゆる手段を講じ、社会保障費抑制策が進められようとしている。
 日本の国民皆保険制度は、国民の誰もが全国どこでも均一、かつ良質な医療を受けることができる体制を長年にわたり維持してきた。今後も、地域の住民に安心・安全な医療を公平に提供し続けていくためにも、適切な財源を確保のうえ、医療提供体制を維持、発展させていく必要がある。
 以上のことから政府に次の事項を強く要望する。



一、歳出の目安によるシーリングは撤廃し、社会保障に必要な財源を十分に確保すること
一、地域別診療報酬導入や強制力を伴う新規開業規制の議論は即刻撤回すること
一、医師偏在対策はディスインセンティブではなく、補助金等によるインセンティブを設けること
一、セルフメディケーションの過度な推進は、国民の健康を脅かす恐れがあり慎重に議論をすること
一、薬剤の処方権は医師にあり、リフィル処方を医療機関に強要するような議論は即刻撤回すること
一、高齢者の一部負担金増につながる議論は即刻撤回すること
一、保険診療における処方薬はすべて保険給付とすべきであり、長期収載品の選定療養化は即刻撤回すること
一、子ども・子育て支援金制度の財源を社会保障の削減の上に成り立たせている少子化対策関連法案を撤回すること

以上、決議する

令和6年9月8日
近畿医師会連合定時委員総会

近医連特別講演
祈祷から見る心身のケア

 大峯山護持院井光山五臺寺櫻本坊教学執事のザイレ法雲師による特別講演「當病平癒の世界――祈祷寺における心と身のケア」が行われた。
 ザイレ法雲師はドイツ・ハンブルグ市の生まれ。日本に留学中、仏教文学を専攻し、後に興福寺で出家得度。令和5年より櫻本坊に入山している。
 医療が「人間らしい生き方」「豊かな人生」を重視するようになり、それは祈祷にも通じると言及。身体と心は同じ面とする仏教の「心身一如」の考えを説き、精神面・肉体面の二面を同時に治療することが求められると述べた。
 そして、人生観は時代や文化で異なると語り、個々の考えを尊重したケアを促した。