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医師・医療関係者のみなさまへ

ギャンブル等依存症簡易介入マニュアル普及研修

府医ニュース

2024年9月25日 第3085号

依存症を支える地域づくりが大切

 大阪府医師会は9月4日午後、令和6年度ギャンブル等依存症簡易介入マニュアル普及研修を府医会館で開催した。研修の模様はウェブ配信も行われ、医師をはじめ医療従事者約150人が参加した。

 冒頭、阪本栄副会長があいさつ。特定複合観光施設区域整備法(IR実施法)の成立を受け、令和5年に「大阪・夢洲地区整備計画」が策定される中、「ギャンブル等依存症への対応は喫緊の課題である」と強調した。若年層を中心にオンラインカジノの利用者が広がっていることにも懸念を示した。その上で、本研修会がギャンブル等依存症の早期発見とともに、かかりつけ医と専門医療機関の連携強化の一助につながればと期待を寄せた。
 まず、「ギャンブル等依存症の基礎知識」と題して、池田俊一郎氏(関西医科大学総合医療センター精神神経科講師)が講演した。池田氏ははじめに依存形成のメカニズムについて説述。我が国では、成人の3.6%(約320万人)に「ギャンブル等依存症が疑われる」と指摘し、諸外国と比しても非常に多いと報告した。また、ギャンブル等依存症は、借金や貧困、孤立などを引き起こし、自殺の危険性も高まると述べ、自殺企図の生涯経験率は40.5%と明かした(健常者は1.8%)。さらに、薬物依存やアルコール依存についても触れたほか、依存症と双極性障害や前頭側頭型認知症、ADHD(注意欠如・多動症)との鑑別も必要と加えた。
 治療について池田氏は、「回復の方法は人それぞれ」と語る一方で、家族によるイネーブリング(ギャンブルで作った借金を肩代わりするなど)は止めるべきと断言。関係機関・団体が連携しながら患者および家族の相談・治療・回復を途切れなく支援する大阪アディクションセンター(OAC)やおおさか依存症ポータルサイト、大阪依存症ほっとラインなどを紹介しつつ、仲間を増やす地域づくりが重要と締めくくった。

簡易介入マニュアルの活用
患者との関わり方解説

 続いて、戸島覚氏(とじまクリニック院長)が、「ギャンブル等依存症簡易介入マニュアル」の活用法を説述した。本マニュアルの使用目的は、▽ギャンブル等依存症に該当する患者を発見するためのスクリーニング▽依存症患者への簡易介入▽府民に向けた情報提供と予防――と言及。診断基準やスクリーニングテスト(PGSI)の点数ごとの対応方法、患者との関わり方のポイントを解説した。
 また、医療機関受診のきっかけは、うつや不安からくる不眠、食思不振など、ギャンブル等依存症ではないケースも多く、依存症を早期に発見し、専門医療機関につないでほしいと訴えた。
 最後に、依存症当事者が登壇。自身の体験や依存から回復したきっかけを語ったほか、回復施設や自助グループを紹介した。