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重症感染症のデータ収集事業開始へ

府医ニュース

2024年9月18日 第3084号

平時から新興感染症に備え臨床研究を

 厚生労働省は、新型コロナウイルス感染症(COVID―19)拡大を受けて、令和3年に新興・再興感染症データバンク事業ナショナル・リポジトリ(REBIND:REpository of Data and Biospecimen of INfectious Disease)を立ち上げた。国立感染症研究所(NIID)と国立国際医療研究センター(NCGM)が委託され、両者の連携で実施機関となっている。
 さらに東北大学東北メディカル・メガバンク機構(ToMMo)、東京大学医科学研究所バイオバンク・ジャパン(BBJ)、東京大学医科学研究所、東京大学病院が再委託機関となっている。COVID―19拡大を受けてREBINDを拡張し、今年9月から開始した。
 施策の目的は、COVID―19の克服とともに、今後新たに発生する感染症に対し、根拠のある対策を迅速に取ることだ。臨床情報・検体等を早急に収集し、疾患の重篤度や感染力を評価するなど、診療に資する情報を把握することとあわせ、検査方法や治療薬・ワクチン等研究開発の基盤となる仕組みの整備を行う。当初はCOVID―19を対象としていたが、現在はエムポックス、小児肝炎も対象としている。
 事業の概要は、協力医療機関から対象患者の臨床情報・検体等を、NIIDとNCGMにおいて集約し、臨床情報と病原体の情報を解析できる体制を整える。NIIDで病原体のゲノム解析、BBJにおいて検体の長期保管、東大医科研でヒトゲノム解析、東大病院では収集・分析の支援を行う。ToMMoでは統合データベース構築やショーケース構築を行う。
 研究協力機関等から対象患者の診療情報(レセプト情報等)および検体(血液・鼻咽頭ぬぐい液・唾液・皮膚ぬぐい液・その他)を収集し、分析したデータを利活用する研究機関、製薬会社、大学等に無償で提供する。分析され、提供されるデータは、臨床情報(個人を識別できるデータを除く)、ゲノムデータ(ヒトゲノム・病原体ゲノム)、および血漿・PBMC(T細胞、B細胞、NK細胞、単球、樹状細胞などのリンパ球を含む)、鼻咽頭ぬぐい液・唾液などである。
 その成果として、①感染症の臨床像について医療機関へ情報提供②感染症の重症化因子の同定(患者属性・ヒトゲノムの感受性遺伝子の同定等)③新しい検査手法、治療、ワクチンの開発――などが期待される。REBIND試料・データを通して得られた研究成果は、利活用者に帰属する。そして、成果を公表する際には、REBINDのデータを利用した旨を謝辞およびmethodに記載することが求められる。
 この仕組みが新興・再興感染症に対する平時での対策として、十分機能することが期待される。