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府医ニュース
2024年9月4日 第3083号
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会大阪府地方部会(猪原秀典会長)と大阪府耳鼻咽喉科医会(有賀秀治会長)共催による第3回市民公開講座が6月30日午後、大阪市内で開催された。今回は「口腔がんをもっと知ろう」をテーマに実施され、約220人の府民が参加した。
冒頭、主催者を代表し猪原・同学会大阪府地方部会長があいさつ。首から上の脳以外のがんは耳鼻咽喉科の診療領域と述べ、近年では「耳鼻咽喉科頭頸部外科」と標榜する医療機関も増加していると紹介した。その上で、今回のテーマである「口腔がん」は、治療後も話したり物を食べる機能を維持するために、早期発見・早期治療が肝要と指摘。本日の講演で理解を深めてほしいと呼びかけた。
講演では、まず、音在信治・大阪府耳鼻咽喉科医会理事が「耳鼻咽喉科で診るがん(くちとのどの仕組みとがんの初期症状)」と題して解説した。音在氏は、くちとのどの仕組みや役割を説示した上で、がんを疑うべき症状として、▽鼻血が頻繁に出る▽口内炎のような症状が2週間以上改善しない▽喉の張りや違和感、声のかすれ、息苦しさがある――を列挙。喫煙や飲酒がリスクになるとして注意を促す一方、早期に発見し、治療を行えば十分に治癒できると強調した。
続いて、角南貴司子氏(大阪公立大学大学院医学研究科耳鼻咽喉病態学・頭頸部外科学教授)が「くちのがんの検査と治療、最近のトピック」について講演。角南氏は、紫外線や喫煙、アルコール、放射線、物理的な刺激など様々な刺激によって細胞が傷つき、がん細胞に変化していくと述べ、がんを疑う所見があれば、視診、触診を行い、組織生体検査によって確定診断し、同時に、CTやMRIでがんがどの程度広がっているかを検査すると語った。治療としては、▽手術▽放射線▽抗がん剤――が三本柱となり、口腔がんでは手術による治療が多いと加えた。さらに、口腔内の菌とがんの発生に関して研究した自身の研究室の論文を紹介。フソバクテリウム・ヌクレアタムという菌ががんを進行させることが判明したと報告し、がん抑制に関する研究を進めているとまとめた。
最後に、患者の立場として舌がん経験者が登壇。口腔内の違和感に気付きつつも、医療機関の受診を先送りにしてしまい、がんが発覚した時にはステージ4で、舌を50%切除したと振り返り、少しでも気になることがあれば早期に医療機関を受診するよう訴えた。
閉会に際して有賀・大阪府耳鼻咽喉科医会長があいさつ。大阪市中央急病診療所では同医会員が365日出務しており、休日夜間の耳鼻咽喉科領域の救急診療を担っていると紹介した。