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時事

第180回社会保障審議会医療保険部会開催

府医ニュース

2024年9月4日 第3083号

被用者保険の適用の在り方について

 令和6年7月3日に第180回社会保障審議会医療保険部会が開催され、まず「働き方の多様化を踏まえた被用者保険の適用の在り方に関する懇談会」について議事が行われた。懇談会の資料に基づいて説明があり、(1)短時間労働者に対する被用者保険の適用範囲の在り方(2)個人事業所に係る被用者保険の適用範囲の在り方(3)複数の事業所で勤務する者、フリーランス、ギグワーカーなど、多様な働き方を踏まえた被用者保険の在り方――を主な議題として、8回開催された上で、議論を取りまとめたと報告があった。被用者保険の適用に関する基本的な3つの視点は、①被用者にふさわしい保障の実現②働き方に中立的な制度の構築③財政的負担のみならず事務負担が増加する事業所への配慮および保険者が分立する医療保険制度においては保険者の財政や運営に与える影響をどうするか――であった。
 短時間労働者に対する被用者保険の適用範囲の在り方においては、4つの要件、▽企業規模要件▽労働時間要件▽賃金要件▽学生除外要件――についてまとめた。まず、企業規模要件については、他の3要件に優先して撤廃の方向で検討を進めるべきである。一方で、これに伴う事業所負担や経営への影響、保険者の財政や運営への影響に留意し、必要な配慮措置や支援策の在り方について検討を行うことが必要である。労働時間要件の引き下げについては、雇用保険の適用拡大等を踏まえ検討が必要との見方がある一方、保険料や事務負担の増加という課題は大きな影響を与えることとなる。また、国民健康保険・国民年金というセーフティネットが存在する国民皆保険・皆年金の下では、「被用者」の範囲をどのように線引きすべきかの議論を深めるべきであり、慎重な検討を必要とした。次に賃金要件については、年収換算で約106万円相当という額が就業調整の基準として意識されている一方、最低賃金の引き上げに伴い労働時間要件を満たせば賃金要件を満たす場合が増えてきていることから、こうした点も踏まえて検討を行う必要がある。学生除外要件については現状維持が望ましいとの意見が多く、見直しの必要性は低いと考えられた。
 個人事業所に係る被用者保険の適用範囲の在り方では、常時5人以上を使用する個人事業所における非適用業種(農業・林業・漁業・宿泊業・クリーニング・理美容・ビルメンテナンス等)については、5人未満の個人事業所への適用の是非の検討に優先して、解消の方向で検討を進めるべきであるとした。
 最後に、多様な働き方を踏まえた被用者保険の在り方として、複数の事業所で勤務する者について、労働時間等を合算する是非は、マイナンバーの活用状況や雇用保険の施行状況等を参考に、実務における実行可能性等を見極めつつ、慎重に検討する必要がある。フリーランス等の働き方や当事者のニーズは様々であるが、現行の労働基準法上の労働者については、被用者保険の適用要件を満たせば適用となることから、適用が確実なものとなるよう、労働行政との連携を強化しており、その運用に着実に取り組んでいくべきであり、中長期的課題として引き続き検討していく必要があるとした。(中)