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医師・医療関係者のみなさまへ
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府医ニュース
2024年9月4日 第3083号
7月度(納涼)郡市区等医師会長協議会が7月18日午後、大阪市内のホテルで開催された。この日は通常の連絡事項に加えて、松本吉郎・日本医師会長を講師に招いて特別講演を実施。最近の医療情勢や診療報酬改定のポイントなどが伝えられた。
清水智之理事が司会を務め、はじめに中尾正俊会長があいさつ。中尾会長が会務運営の基本として掲げる①地域医療体制の整備②適切な医療DXの検討③広報部門の強化④事務局改革――について進捗状況を説明した。
また、松本・日医会長の特別講演にあたり、令和6年度診療報酬改定に言及。財務省等が主張していた大幅なマイナス基調から「大きく押し戻した」と評価した。その上で、最も大きな懸念は「大臣折衝で物事が進むこと」だと指摘。医師会がどれだけ国民の立場に立った医療を訴えても、決めるのは政治だとし、来夏の参議院議員選挙での結果が求められると訴えた。その上で、医療機関が安心安全に診療できる環境を整えるため尽力すると語った。
郡市区等医師会新会長の紹介に続き、▽府医創立77周年記念行事および6年度健老会開催▽「日医最高優功賞受賞記念府医会長賞」被表彰団体推薦依頼▽6年度賃金構造基本統計調査の協力依頼――等について栗山隆信理事が説明した。創立記念行事では、式典の内容を伝えるとともに、新型コロナウイルス感染症の状況によっては変更もあり得るものの、「6年ぶりに健老会を開催する」旨が述べられた。そのほかの案件については、郡市区等医師会への協力が求められた。
また、永濵要理事より、「郡市区等医師会主催社会保険指導講習会」の実施が促された。あわせて、近畿厚生局からの回答に修正が加えられたとの報告がなされた。これは、前回の郡市区等医師会長協議会(6月28日開催)で、近畿厚生局より「マイナンバー保険証」の利用促進が要請された際に出された意見や質問についての同局の見解。一旦は7月3日に回答されたが、10日付で修正文書が届いた。
協議事項では、宮川松剛副会長が新型コロナの急拡大を受けて「緊急・新型コロナウイルス感染症に関するシンポジウム」を実施すると報告。さらに、笠原幹司理事からHPVワクチンについて、「あらゆる場面で啓発してほしい」との協力が求められ、意見交換が行われた。
武本優次・泉大津市医師会長からは、生活習慣病管理料の療養計画書について簡単なエクセルシートを作成したとの発表があり、当該資料が府医に提供された。
中尾正俊会長が座長を務め、松本吉郎・日本医師会長が、「最近の医療情勢と診療報酬改定のポイント」と題して講演した。
はじめに松本・日医会長は、政府や財務省との交渉に関して「攻め方を誤ると逆手に取られる」との考えを示し、「攻防一体」の活動が必要だと主張。経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)2024を巡る政府との対応でもその姿勢を貫いたと振り返った。
これまでの議論では、医療費を高齢化の伸びに抑えるという、いわゆる「歳出の目安」について、日医は「デフレ下の遺物」と切り捨てた。多くの国会議員にも「歳出の目安」を改める必要性を説き、結果として骨太の本文に「日本経済が新しいステージに入りつつある中で、経済・物価動向等に配慮しながら、各年度の予算編成過程において検討する」との文言が盛り込まれた。これらを評し、松本・日医会長は「半歩程度の前進」だと言及。令和8年度診療報酬改定議論で重要な位置付けになるとして、引き続き情報発信を続けると語った。
医療DXについても、医療費削減を目的とするのではなく、「安全で質の高い医療の提供および医療機関の負担軽減が実現されなければならない」と日医の方針を言明。当初の文案から文言が修正されたと評価した。
財政制度等審議会「春の建議」では、医師の偏在対策の一環として、地域別の診療報酬などが持ち上がった。これに対しては言語道断だと批判。医師偏在については一つの手段で解決する方法は存在せず、「地域の声に耳を傾け、国が必要な財政を支援し、好事例の横展開や研修等で支えることが基本」との認識を示した。そのほか、▽タスクシフト▽保険外併用療養の一部拡大▽医薬品の安定供給――などに関する見解を伝えた。
6年度診療報酬改定では、医療従事者の賃金アップを旗印に臨んだと説明。新設された「ベースアップ評価料」を取り入れる医療機関が少なければ、次回改定時の不安材料になるとして、積極的な算定を促した。一方、診療側代表の中医協委員に対する不満の声には、「大臣折衝事項を覆すことは困難であった」と強調。十分に職責を果たしていると労った。