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勤務医の窓

新病院建設に携わって思うこと

府医ニュース

2024年8月28日 第3082号

 大阪警察病院は令和4年から社会医療法人警和会となり完全に民営化されました。7年1月から現第二大阪警察病院の土地に新病院を開設します。私は、過去に4病院で病院移転を経験し、借金返済に厳しい労働環境を強いられたこともあります。新病院建設となると当然経営的な締め付けが厳しくなるのですが、今回病院幹部として、新病院の設計、病院名変更、組織運営、経営・借金返済、引っ越し計画など様々な経験をさせてもらいました。
 まず、本年7月より法人名を「大阪国際メディカル&サイエンスセンター」と改めました。初めて知ったのですが、民間病院では病院名にセンターをつけることができませんが、法人名では可能ということでした。また、病院名は「大阪けいさつ病院(英語表記:Osaka Keisatsu Hospital)」に変更しました。なぜなら従来のOsaka Police Hospitalは、海外では拘置所病院のイメージだそうです。
 経営面では、予想外のマイナス要因が重なり、借金の増額と厳しい返済プランの見直しに迫られています。ウクライナ紛争、円安で30%程度建築費が高騰し、コロナ以降、受診控えのためか全国的に5~8%程度患者が減ったとされ、減収のため周辺病院でも患者獲得競争が激しくなっています。実際、独立行政法人福祉医療機構の病院経営動向調査によれば、民間の一般病院の経常利益率が令和5年に史上初の赤字転落という衝撃のデータが示され、新病院の経営戦略を考える上で厳しい船出となるのは明白です。
 さらに、業務効率化のためDXも可能な限り取り入れます。職員全員に電子カルテ搭載スマートフォンの配布、受付・診察・支払いのETC化、アバターによる院内案内、地域医療連携ネットワークの構築などを計画していますが、診療報酬では賄えない莫大な投資が必要です。
 今後、労働人口が急速に減少するのは確実で、すでに社会問題化している人手不足倒産を避けるためにもDXはやむを得ないと、一歩先を見据えての決断です。人口減少、高齢化の中での今後の病院経営には、超急性期、回復期、療養型の役割分担を明確にするか病院の集約化が必須と言われる中で、民間病院ではどうするのか、アライアンス化か集約化(M&A?)かなど課題は山積みです。どうか補助金や繰入金などの赤字補填が一切ない民間病院の苦しみを医師会の政治力で行政に伝えてほしいものです。

大阪けいさつ病院副院長
正井 崇史
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