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医師・医療関係者のみなさまへ
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時事
府医ニュース
2024年8月28日 第3082号
12月2日より保険証の発行が廃止される見込みであるが、その撤回の兆しは見られない。現場では、依然として従来の保険証の利用が約90%を占めており、医療界では全国保険医団体連合会などによる保険証廃止の中止を求める運動が活発に行われている。実際、小児や高齢者を多く受け入れている医療機関では、マイナ保険証での受診に対して不安を抱いていることが考えられる。また、保険証だけでなく、マイナカードの院内での紛失も報告がある。すべての情報や手続きを一元化することは、様々なトラブルに巻き込まれるリスクを高めることになる。
岸田文雄首相は昨年の記者会見で、マイナ保険証を持たないすべての人に「資格確認書」を発行することで不安を解消する意向を示した。しかし、推奨キャンペーンの影響か、資格確認書の発行についての情報が十分に周知されていない。そのため、多くの人々が「マイナ保険証を作らなければ医療機関を受診できなくなる」と誤解している。「資格確認書」の存在を、マイナ保険証同様に広報し、国民に安心感を提供することが重要ではないだろうか。さらに、10月からはマイナカードの保険証機能が解除可能となるため、マイナカードを持つ人々も従来の保険証と同様の資格確認書を入手できるようになる。
一般患者の動線と隔離された院外診察室においては、モバイル端末を用いた資格確認の手法が存在する。在宅医療において利用される「居宅同意型」方式と、柔道整復、鍼灸、訪問医療、健康診断機関、紙レセプトを用いる医療機関に対して用意された「資格確認限定型」方式がある。推奨されているのは居宅同意型方式である。これは、医療機関が提供するモバイルを通じてマイナ在宅受付Webを利用し、資格確認を行う。患者にマイナ在宅受付Webの画面を提示し、本人がパスワードを入力しマイナンバーカードを読み取ることで、モバイル端末ではなく「院内の資格確認端末」にて資格確認や医療情報の取得が可能となる。
一方、資格確認限定型方式は、オンライン資格確認において患者の資格情報のみを取得するシンプルな仕組みである。マイナ在宅受付Webとは異なり、その場で資格確認情報を得ることができ、現在の保険証確認の手順と大きな違いはない。ただし、事前の申請が必要であり、医療機関の対象は特定健診実施機関や紙レセプト医療機関に限られる。さらに、この方式は、顔認証システムが使えない場合のバックアップとなり得る。保険証廃止を撤回しないのなら、ぜひ、すべての医療機関で使用できるようにしてほしいものだ。
しかし、一番の備えは、現行の保険証そのものである資格確認書の携帯であろう。すべての国民に資格確認書が発行されることが理想的であるが、その方針は政府には見受けられない。したがって、10月からマイナカードの保険証機能の解除方法を、しっかりと周知することが重要ではないだろうか。(葵)