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HPVワクチンの啓発活動が必要

府医ニュース

2024年8月28日 第3082号

キャッチアップ接種、9月末までに

 子宮頸がんは、高リスク型発がん性のヒトパピローマウイルス(HPV)が性的接触により感染し、持続感染により数年~十数年後に前がん病変を経て発症する。国立がん研究センターの統計によると、我が国では年間1万879人(2019年)が子宮頸がんを発症し、約2900人が死亡する。このウイルスは、子宮頸がんのほかに、尖圭コンジローム、肛門がん、中咽頭がん発症にも関係する。
 13年4月1日からHPVワクチンの定期接種が、12歳~16歳(小学6年生~高校1年生相当)の女子を対象として開始された。ワクチンは2価のサーバリックス、4価のガーダシル、昨年4月から9価のシルガード9がある。標準的な接種方法はどのワクチンも初回から3回目を6カ月後に接種するので、キャッチアップ接種期間(22年4月~25年3月)中に終えるには、24年9月末までに1回目を接種する必要がある。キャッチアップ対象者は、1997年4月2日~2008年4月1日生まれの未接種者である。
 13年3月に朝日新聞が「子宮頸がんワクチン 中学生が重い副反応」のタイトルでスクープ。3月25日には「全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会」が設立され、全身の痛みや運動障害などの「多様な症状」の動画が報じられ、衝撃を与えた。厚生労働省は「十分な情報が提供できない状況」として、同年6月14日に「積極的な接種勧奨は差し控える」とした。そのため、70%前後あった接種率が1%未満まで下落した。15年、名古屋市立大学の鈴木貞夫教授は、名古屋市のワクチン接種対象年齢の女子約7万人を対象にアンケート調査。ワクチン非接種者でも「多様な症状」が一定数あり、ワクチンとの関連性を否定した(いわゆる名古屋スタディ)。厚生労働科学研究班(代表=祖父江友孝氏)は、その年の7月~12月の6カ月間に全国の病院を対象に前述の「多様な症状」を認める患者の有無について全国疫学調査「子宮頸がんワクチンの有効性と安全性の評価に関する疫学研究」を実施し、その結果を16年12月の厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会で審議。ここでも、ワクチン接種歴のない者にも「多様な症状」が一定数見られ、ワクチンとの因果関係が否定された。
 15年12月17日には、WHOが「HPVワクチンの安全性に関する声明」を出し、非科学的な日本を名指しで批判した。21年11月12日開催の同審議会副反応検討部会は、安全性に特段の問題がないとして、「HPVワクチンの積極的勧奨を差し控えている状態を終了させることが妥当」と結論付け、22年4月から他の定期接種と同様に個別接種の勧奨を行うこととなった。
 学校現場で学校医が「HPVワクチンの効果と安全性につき」啓発活動できるよう、医師会としても支援していく必要がある。