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RSウイルスワクチン、「60歳以上」「妊婦」に承認

府医ニュース

2024年8月21日 第3081号

公費の補助金が求められる

 RSウイルス感染症は、新生児から高齢者まですべての年齢で感染する呼吸器感染症であるが、2歳までにほとんどすべての子どもが感染すると言われている。6カ月未満の新生児や乳児、特に先天性心疾患を持つ小児では重症化することがある。また、慢性呼吸器疾患など基礎疾患のある高齢者も注意を要する。グラクソ・スミスクラインの研究グループの統計では、日本国内でRSウイルス感染症で入院する60歳以上の方は、1年間に6万3千人、うち死亡するのは4500人としている。
 令和5年8月28日、厚生労働省の専門家部会は、60歳以上を対象にRSウイルスワクチンを了承し、同年9月25日にアレックスビー筋注が承認された。治験では82.6%の有効性が認められている。1回の筋注であるが、2万5千円~2万7千円と高額で、医療機関により様々である。
 一方、同年11月27日には、妊婦・60歳以上を対象としたRSウイルスワクチンが了承され、6年1月18日にファイザー社の組み換えRSウイルスワクチンのアブリスボ筋注の妊婦への適応が承認された(3月26日、60歳以上への適応も承認)。妊婦への接種は妊娠28週~36週に受けた場合に効果が高いとしている。米国では同32週~36週、欧州では同24週~36週が推奨されている。
 国際共同臨床試験(治験)の結果は、生後3カ月以内の重症化予防は81.8%、生後6カ月以内は69.4%であった。副反応、早産等の有害事象、生まれた子どもの発育遅延や障害の有無等の頻度は、プラセボと同様で差がなかった。
 アブリスボは、今年5月31日に発売となったが、接種費用は3万円~3万8500円と高額で、自費のため医療機関により様々である。メカニズムは母子免疫の利用であり、ワクチンを妊婦に接種して、母体で作られた中和抗体が胎盤を通じて胎児に移る。この母子免疫は、3カ月未満の乳児が感染すると重症化する百日咳にも適応され、平成24年に英国で百日咳が流行した際、1年間に6割の妊婦が三種混合ワクチン(百日咳・ジフテリア・破傷風DPT)を接種した。ところが原因は不明であるが、アブリスボとDPTを妊婦に同時接種すると、百日咳菌への免疫応答が低下することが分かったので、注意を要する。
 60歳以上のRSウイルスワクチン(アレックスビー)も妊婦にも適用があるワクチン(アブリスボ)も、ともに有効性が認められるが非常に高額である。公費による補助金が求められるところである。