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府医ニュース

2024年7月31日 第3079号

何でこの職にしがみついているのかと 思う日もある夜の電車で
○○市(当時の住所)
 星野仁美 30才 医師
「わたくしたちのサラダ記念日」(河出書房新社 1988年発行より)

 1987年に出版された俵万智さんの第一歌集「サラダ記念日」は、200万部を超える大ベストセラーとなりました。私は、当時買って読み、本に挟み込まれていた読者カードに「あなたの一首をどうぞ」とあったので、2、3首書いて送りました。約4万人から20万首ほど送られて来たそうで、その中から1300首余りを選んで翌年発行されたのが、「わたくしたちのサラダ記念日」です。冒頭の短歌は採用された私の作です。名前はペンネームです。
 先日たまたまNHKの短歌の番組を見ていたら、俵万智さんが出演されていて、番組の話題とは関係なかったのですが、「わたくしたちのサラダ記念日」に採用されたことを思い出しました。
 当時、私は第2子の産休明けで、職場に復帰したばかりでした(当時育休はありませんでした)。通勤に使っていたのは近鉄南大阪線の大阪―奈良間で、沿線は田畑が多く、夜の窓外に灯りはまばらでした。病院では下っ端で、自分が世の中の役に立っているのか分からず、しかし帰りは暗くなってからという生活でした。子育てでは実母、義母、伯母の世話になっており、いったい自分は何をしているのかと、暗い窓外を眺めながら思っていました。
 採用はされませんでしたが、同じカードに「様々に思い迷う日あろうとも やはり私はこの職が好き」という歌も書きました。つたないですが、どちらも当時の正直な気持ちです。(瞳)