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労災医療研修会

府医ニュース

2024年7月31日 第3079号

高齢者就労と職場の医療安全

 大阪府医師会労災部会(部会長=加納康至・府医副会長)は6月26日午後、同産業医部会と労災保険情報センターとの共催で労災医療研修会を開催。会場の大阪市中央公会堂には、184人が参集した。

 加納部会長は開会あいさつで、トリプル改定に伴う労災診療費算定基準の改定に触れ、算定誤りへの注意を促した。また、本研修会が日常診療の一助になればと期待を寄せた。

社会的孤立を防ぐことがフレイル予防に

 清水智之理事が座長を務め、はじめに山本浩一氏(大阪大学大学院医学系研究科老年・総合内科学教授)が、「老年医学から見た高齢者就労」と題し、高齢者就労におけるリスクベネフィットについて講演した。
 まず、「労働災害」は医学的に大きなリスクと指摘。▽フレイル▽認知機能低下▽血圧調節異常▽内服薬――といった背景因子を説示し、予防的介入が重要だと述べた。ベネフィットについては、高齢者のWell-beingを中心に詳説した。社会的孤立を防ぐことがフレイル予防につながるとし、フルタイムではなく「プチ就労」により負担を軽減し、ある程度の責任、学び・成長、経済的評価を得ながら社会参加を継続させる仕組みを紹介。今後は、技術開発により就労の安全性をさらに高めたいと結んだ。
 続いて、「職場の医療安全を進めるチームSTEPPS」と題し、宮﨑浩彰氏(関西医科大学医療安全管理センター副センター長・理事長特命教授)が登壇した。
 チームSTEPPS(Strategies and Tools to Enhance Performance and Patient Safety)とは、アメリカで開発された医療のより良い結果と患者の安全のために、チームとして事故を防ぐ戦略のこと。その中核となる、①コミュニケーション②リーダーシップ③状況モニター④相互支援――などスキルの概要や向上に係るツールを伝えた。加えて、強いストレスや固定概念などがあると当たり前のことができなくなると解説。医療事故の要因は人的なものが最も多く、全員で一緒に取り組み、次につなげていける安全な職場環境が文化として定着するよう推進していきたいと語った。