TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ

中尾会長、会務運営の指針などを語る

府医ニュース

2024年7月31日 第3079号

会員が安心して診療に専念できる環境を

 中尾正俊会長は、第327回大阪府医師会臨時代議員会(5月19日)で会長に選任・選定された。6月20日に開かれた第328回府医定例代議員会終結後、新会長に就任した。中尾執行部の始動に際して、現在の心境や会務運営の方針などを聞いた(聞き手・大平真司理事〈広報担当〉)。

広報のあり方が一層重要に
府医ニュースの役割に期待

大平 広報担当の大平です。新体制が始まったばかりですが、本日は会務の運営方針などを伺いたいと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。
中尾 よろしくお願いいたします。
大平 さっそくですが、第18代となる府医会長にご就任されました。今回は14年ぶりとなる会長選挙の結果を受けてということになりますが、現在の率直なお気持ちをお聞かせください。
中尾 選挙ということで会員の先生方には大変ご心配をおかけしました。私は自分の信念を主張させていただきました。結果として当選いたしましたが、以降はノーサイドだと思っています。多くの先生方のご意見に耳を傾け、会員の先生方が安心して診療に専念できる環境を作っていきたいと考えています。
大平 診療に専念できる環境こそが患者さんのためでもあります。
中尾 その通りですね。今回の診療報酬改定は、診療科にかかわらず、かなりのマイナス影響が出ています。状況を精査し、一刻も早く改善されるよう日本医師会に働きかけてまいります。また、状況によってはデータ収集など、できる限りの協力はするつもりです。
大平 診療報酬改定では、財務省の機動的調査が影響を及ぼしたようですが、医療界としても現状を伝えるデータが必要ではないでしょうか。
中尾 日医総研の役割は大きくなるでしょう。一方で、国民に訴えかけることも大切です。今回の診療報酬改定率プラス0.88%は、人件費引き上げや物価高騰に世論が理解を示したという点が大きい。そういった意味では広報はとても大事です。府医ニュースの役割も重要で、編集委員の先生方にはご苦労をおかけしますが、一層の紙面の充実をお願いしたいです。
大平 立候補の際にも広報の重要性を訴えておられました。
中尾 新型コロナウイルス感染症のパンデミックで広報の重要性を痛感しました。会員に行政通知などをどれだけ迅速に届け、医療体制を守るのか。また、医師会がメディアを通じて正しい情報を伝えることで多くの府民の安心につながっていたかを知りました。さらにブラッシュアップした広報展開を考えたいと思っています。
大平 広報担当としても尽力いたします。デジタルの活用も視野に入れていきたいと考えています。
中尾 平時の会務を伝えることも大切だと思います。LINEアプリを活用した情報発信などの構想もあり、組織強化につなげていきたいと思っています。

趣味は古寺巡礼
古に思いをはせる

大平 少し話題を変えて、中尾会長のお人柄も知っていただきたいと思います。趣味や特技などをお聞かせ願えますか。
中尾 特技は思い浮かびませんが、趣味は古寺巡礼です。学生時代から京都や奈良にはよく行きました。卒業後の勤務先が奈良でしたので、いろいろと巡りましたね。
大平 心が落ち着きますね。
中尾 最近は忙しくてなかなか行けていませんが、少し時間を作って足を運びたいです。古い時代に思いをはせるのも良いものです。
大平 座右の銘があれば教えてください。
中尾 初志貫徹です。最初に決めたことは必ずやり通す。くじけそうな時、心の中でつぶやいています。

会務運営に向けて4つの柱で進める

大平 会務運営にあたり重視される点をお聞かせください。
中尾 先ほど申しました広報の強化に加えて、▽地域医療の充実▽医療DX▽事務局改革――の4つにまずは重点的に取り組みたいと考えています。
大平 具体的に教えてください。
中尾 地域医療ですが、第8次医療計画が始まり、地域の実情に応じた医療提供体制の構築が求められています。地域包括ケアでは在宅医療が中心です。大阪府では、在宅医療の圏域を二次医療圏単位として整備し、「在宅医療に必要な連携を担う拠点」を中心に在宅医療体制が組まれます。地域の医師会の役割が大きくなっていくのは確実ですので、府医として全力でサポートできる体制を整えたいと考えています。
大平 地域のニーズに応えていくことが大切ですね。
中尾 大阪府に対しては地域医療介護総合確保基金のさらなる活用を促したいです。財政面を担保していただき、郡市区等医師会と協力して事業を展開していきたいと考えています。また、府医では、地域医療に係る各種委員会を多く設置していますので、行政からオブザーバーでの参加を求めるなど、地域医療の現状を行政側とも共有したいですね。
大平 医療DXについてはいかがでしょう。
中尾 拙速な推進には強く反対します。患者さんを含めて、誰一人取り残されないように丁寧に進めていくことが大切です。
大平 導入費用やランニングコストも負担ですし、今までと同じ診療ができないなら、廃業するとお考えになる先生方も心配です。
中尾 コストについては、日本医師会や行政とも協力し、補助金の活用など医療機関の負担が大きくならないよう求めていきます。また、会員のサポートに関しては、郡市区等医師会や大阪府医師協同組合とも情報を共有しながら、適切にサポートできる体制を構築したいと考えています。ロードマップを示しながら、会員に分かりやすくお伝えしたいとも思っています。

事務局改革に向けて体制も一新

大平 事務局改革とのお話もありました。
中尾 理事会で決まった府医の方針を速やかに形にできる体制にしたいと思っています。そのためには風通しを良くし、いろいろなアイデアを提案してもらえるような、特に若手が自信をもって働ける環境を作りたいです。
大平 人材育成も課題の一つですね。
中尾 事業によっては複数の部署にまたがることもあります。縦割りだとなかなか進まないこともありますので、垣根を越えてプロジェクトチームのようなものを作るのも一つだと考えています。幸い、府医には優秀な職員が多くいますので、新しい事務局長とも相談しながら進めていきたいです。事務局の底上げは、会員サービスにつながりますので、しっかり対応してまいります。
大平 事務局長が交代し、事務局体制も大きく変わりそうです。働き方改革についてはどうお考えでしょうか。
中尾 研修などを充実させ、若手が働く意欲を持てるようにと事務局長に指示しています。働き方改革では、システムを効率化するなどして、できるだけ就業時間内に業務を終えられる体制に変えていきたいです。

地区医師会や日医との連携

大平 中尾会長は理事になられた頃より地域医療分野をご担当されていました。
中尾 平成16年4月に理事に就任いたしましたので、長期にわたって担当させていただいておりました。近年は医療機関連携だけではなく、多職種による連携の重要性も増しており、地域で協働して患者さんを支えることがとても大事だと思っています。
大平 会員と一番近いのは地区医師会です。
中尾 ご指摘の通りです。府医は会員一人ひとりというよりも、そこは郡市区等医師会が頼りです。地区医師会との連携推進も大きなテーマであり、先生方の意見をお聞きしながら、より良い連携体制が構築できるよう取り組みたいと思います。
大平 若手会員の参画も重要です。
中尾 若い先生方にも医師会活動に積極的にご参加いただき、活性化させたいですね。そのためには、大学との関係も重要です。私自身、若手の育成も力を入れたいと思っており、U40OSAKA勤務医部会にもなるべく顔を出したいですし、若手医師とも積極的に関われる機会を作りたいと考えています。
大平 日医との関わり方も教えてください。
中尾 基本的には、日医の方針に協力していくつもりです。ただ、意見を言わないということではありません。常に会員の意見に耳を傾け、地域の声を届けていくつもりです。
大平 大阪から参画している茂松茂人副会長(府医理事)の役割が期待されます。
中尾 日医との橋渡し役として大いに力を発揮していただきたいです。

会員へのメッセージ
政治への関心も高めてほしい

大平 会員に向けてメッセージをお願いします。
中尾 会員が安心・安全に医療機関を運営するには、やはり政治が欠かせません。来年の参議院議員選挙に向けて、日本医師連盟が推薦する釜萢敏・日医副会長を多くの得票数で当選させることが大切であり、ご理解・ご支援をお願いします。
大平 最後に、総括していただけますか。
中尾 会長就任にあたっては選挙となり、会員の先生方にご心配をおかけしたことは心苦しく思っています。選挙には分断のリスクもありますが、組織の強靭化につながる一面もあると思っています。会員が一丸となって府民・国民の命と健康を守ることが医師会の使命です。厳しい課題が山積していますが、日医を中心に医師が団結して声を上げていかなければなりません。今後も一層のご支援・ご協力をお願い申し上げます。