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第156回日医定例代議員会/第157回日医臨時代議員会

府医ニュース

2024年7月17日 第3078号

会長選挙で松本氏が再選 2期目の会務運営始まる

 第156回日本医師会定例代議員会(定数380人)が6月22日午前、日医会館で開かれた。任期満了に伴う役員改選が行われ、現職の松本吉郎氏が再任された。翌23日には第157回日医臨時代議員会が開催され、全国各ブロックからの代表質問に新執行部が応じた。

 日医代議員の任期は、定例代議員会前日までと規定されており、当日は仮議長が選任される。この日は、日医定款施行細則に基づき、秋田光彦代議員(大阪府)が仮議長に就いた。定足数確認、議事録署名人指名後、立候補していた柵木充明代議員(愛知県)が議長に選定された。
 以後は同氏が議事を進行し、副議長には佐藤和宏代議員(宮城県)が選定された。引き続き、議事運営委員会委員を議長が指名(8人/近畿からは髙橋健太郎代議員〈滋賀県〉が就任)した。

日医事業報告
22年ぶりの2千人増

 茂松茂人・日医副会長が5月21日の理事会で承認を受けた令和5年度事業を報告。5年12月1日時点での会員数は17万5933人で、前年比2172人増。会員数が2千人以上の増加となるのは22年ぶりとのことで、組織強化への協力に謝辞が述べられた。

日医決算を承認
角田副会長が説明

 角田徹・日医副会長が、一般会計と4つの特別会計(医師年金事業、医賠責特約保険事業、女性医師支援センター事業、医療機関勤務環境評価センター事業)を説明。一般会計の収支差額は2億1951万2392円のプラス。続いて柵木議長より財務委員会委員(大阪府からは阪本栄代議員が就任)が指名され、同委員会を開催。4月26日に開催された前期同委員会での審議状況・結果が平川博之委員長(東京都)より報告され、挙手多数で承認された。

会長選挙を実施
松本氏が再選果たす

 松本吉郎・日医会長が議案の趣旨(日医役員および裁定委員選任、会長・副会長・常任理事の選定)を述べた後、選挙管理委員会の植田清一郎委員長(福岡県)より投票方法等の説明があった。
 その後、村上博代議員(愛媛県)が、「課題が山積する中での会長選挙は、日医がまとまっていないとの印象を与える」と発言。松原謙二候補の辞退を求めた。一方で、「かなわないようであれば、両候補による意見陳述を要望する」との動議を提案した。柵木議長より、松原候補は辞退しないこと、および動議は採択されないことが宣告された。
 会長候補者には、松原氏(大阪府)および松本氏(埼玉県)が立候補。投票の結果、松本氏が選任された(松原氏38票、松本氏334票、白票2、無効4、総数378票)。
 副会長、常任理事、理事、監事、裁定委員候補者は定数どおりで無投票で選任された。引き続き、会長・副会長・常任理事を挙手多数で選定した。新役員の任期は同日より2年後の定例代議員会終結の時まで。
 閉会にあたって、新執行部が登壇。松本会長が謝辞を述べた。

 6月23日には第157回日本医師会臨時代議員会が開催された。柵木充明議長が議事を進行し、はじめに松本吉郎・日医会長より所信表明があった。その後、門脇孝・日本医学会長が登壇し、「日医と連携して山積する課題に臨む」と述べた。
 議事では、「令和7年度日医会費賦課徴収」を審議。角田徹・日医副会長より、『日医会費賦課徴収規程』に基づき、前年と同じ会費額および徴収方法が提案され、挙手多数で可決承認された。
 引き続き、全国各ブロックより18題の代表質問が投げかけられ、新執行部が応じた。近畿ブロックからは、宮川松剛代議員(大阪府/府医副会長)が、「紹介受診重点医療機関とかかりつけ医機能報告制度について」、平石英三代議員(和歌山県)が、「日医が国民の理解を得るためになすべきこと」を質問した。

療養計画書への署名 患者の声集めて展開を
宮川代議員が発言

 荘司輝昭代議員(東京都)の質問に関連して、宮川代議員が発言。生活習慣病療養計画書の署名に対する患者の意見を聞くべきとの考えを示した。診療の際に「サインを望むか」を確認することは可能であり、「国民の声」を集約すれば、当該ルールを廃止できるのではと指摘。また、特定疾患処方管理加算1の廃止、血圧指導・管理の希望等の質問も加えながら、各都道府県が同じフォーマットで「患者の声」を集めてはどうかと訴えた。
 これに対して茂松茂人・日医副会長は、現場の負担は承知しつつも、「しばらくすれば落ち着くのでは」との立場を取った。生活習慣病療養計画書は患者の中でも賛否があるとし、今後改めて検証の上で、どのように変更できるかを検討したいと加えた。また特定疾患処方管理加算1の廃止、特定疾患処方管理加算2の引き下げの影響は、「調査した上で考えたい」とした。宮川代議員が触れた患者へのアンケートに関しては前向きな姿勢を示した。
 この日、茂松・日医副会長は、間瀬憲多朗代議員(茨城県)および前述の荘司代議員の代表質問に答弁している。
 間瀬代議員は、被用者保険の適用拡大で起こり得る問題や、保険料の目的外使用について日医の見解および対応をただした。あわせて、「勤務医は皆保険制度に限界を感じ、自由診療に携わる医師が増えるのでは」との危機感を表した。
 茂松・日医副会長は、国民皆保険制度は先達が守り抜いてきた財産であり、「次世代に引き継ぐため堅持しなければならない」と言明。国が進める子育て・少子化対策は重要であるが、社会全体で支えるべき問題であり、「医療保険財源を切り崩すべきではない」と断じた。さらに自由診療に携わる医師が増えるとの間瀬代議員の懸念には、「金銭的な動機のみで自由診療に流れることのないよう働きかけたい」と述べた。
 荘司代議員は、超少子化・超高齢多死社会となる2040年まで、国民皆保険制度をはじめフリーアクセス、自由開業医制、出来高払いを維持できるのかと質問した。
 茂松・日医副会長は、適切な医療制度には「医療財源の確保も欠かせない」と言及。税金による公助、保険料による共助、自己負担による自助のバランスが重要とし、自己負担のみの拡大を牽制した。その上で、財政当局や経済界等による医療現場の実情と乖離した提言には、現場の声を踏まえしっかり反論すると力を込めた。

各医師会との連携強化進める
松本会長あいさつ(所信表明)

 第156回日本医師会定例代議員会で、会長に再選いただいた。皆様からの支援に、深く感謝申し上げる。
 2年前の会長就任時に「現場の声を直接伺いたい」と述べ、ほぼすべての都道府県を回った。医師会活動は情報共有、相互理解、コミュニケーションが重要であり、今後も緊密な連携を図りたい。
 新型コロナウイルス感染症では、国際的に見ても特筆すべき医療実績を積み上げた。全国の医療機関の懸命な対応の賜物であり、感謝申し上げる。
 これまで日医は、多くの医療関係団体と、一体・一丸となって難局に立ち向かってきた。私は人と人との付き合いを大事にしたいと考えており、これまで築いてきた関係を発展させ、執行部一丸となって、さらなる信頼を得られる医師会に向けて邁進する。
 令和6年度診療報酬改定は、十分に満足できるものではないが、本体改定率プラス0.88%となり、初再診、入院基本料等の基本診療料が引き上げられた。物価高騰や賃金上昇への対応は喫緊の課題であり、補助金や税制措置など、あらゆる選択肢を含め、今後も医療政策を提言し、実行していく。
 医師の働き方改革については今後も、大学病院や病院団体などの医療関係者とともに、状況を把握・検証し、課題解決に臨む。
 前期は、医師会の組織力強化に尽力した。その結果、1年で2千人以上の増となった。これは22年ぶりのことだ。医師会員として定着することが重要であり、まずは会員手続きの簡素化等のため、新会員情報管理システム「MAMIS」(マミス/10月より開始)を活用した会員情報の一元化などに取り組む。若手医師、勤務医等の意見を受け止め、さらなる参画を促す。
 能登半島地震に対するJMAT派遣でも大変なご協力をいただいた。今回の震災対応の経験を踏まえて、被災県との緊密な連携の下でJMATの統括機能を強化する。また迅速な活動ができるよう、訓練や研修を見直し、体制づくりに努める。
 本執行部では、「地域から中央へ」「さらなる信頼を得られる医師会へ」「医師の期待に応える医師会へ」「一致団結する強い医師会へ」という4つの柱の下、運営を進めたいと考えている。全国の医師会の意見を聞きながら、攻防一体となって活動する。新執行部に一層のご支援を賜りたい。

紹介受診重点医療機関とかかりつけ医機能報告制度について
宮川 松剛 代議員(大阪府)

 宮川代議員は、「かかりつけ医」と「紹介受診重点医療機関」が協力し、外来医療が円滑に進むことが望ましいとする一方、国民が不利益を被らない配慮が必要と指摘。「紹介受診重点医療機関」の今後の展開を確認した。
 城守国斗・日医常任理事は、医療機関の役割の明確化と受診動向の円滑化が目的だと強調。連携体制強化には、地域医師会が主導的役割を果たすことが重要とした。また、かかりつけ医「制度」は容認できないと語った。

日本医師会が国民の理解を得るためになすべきこと
平石 英三 代議員(和歌山県)

 平石代議員は、診療報酬改定の詳細や改定趣旨を国民に分かりやすく説明し、「理解を得るための広報活動が必要」だと言及。日医が国民から共感・信頼を得るために広報活動を強化してほしいと訴えた。
 黒瀨巌・日医常任理事は、診療報酬の仕組みについての国民向けサイトのリニューアルを報告。また、郡市区医師会に配置されたサポーターを介しての広報展開の構想があり、具体的な検討に入る予定だと答えた。

選挙結果受け松原氏がコメント

 6月22日に開催された第156回日本医師会定例代議員会での会長選挙を受け、松原謙二氏は本紙に、「財政至上主義に対抗し、国民一人ひとりに合った良い医療を守るために引き続き戦う」とのコメントを寄せた。
 松原氏は大阪府医師会員で、日医会長選は2度目の挑戦だった。

傍聴記
「地域から中央へ」日医執行部に期待

 前夜の雨から一変した快晴の朝、第156回日本医師会定例代議員会が開催された。役員選挙が控えているにもかかわらず、和やかな空気。会長の開会あいさつは「事業・決算報告のご審議をお願いします」と簡潔。役員選挙の会長候補者としての配慮と伺えた。茂松茂人副会長の事業報告では、22年ぶりに2千人以上の会員増と組織強化の成果を誇られた。角田徹副会長の決算報告は延々と数字が並ぶ。意見・質問はなく、粛々と承認へ。
 いよいよ役員選挙。会長候補には、松本吉郎候補と松原謙二候補が立っているが、他の役員はすべて定数どおりの候補者。陣営をもっての選挙ではない異例な状況。会場から「松原候補に辞退を確かめてはどうか。辞退されない場合は、両候補に10分間の所信表明を求めたい」と、これも異例な動議。一瞬、会場に緊張感。議長は規程にないと一蹴。会場に安堵感。投票開始。投票後の代議員はリラックスし、結果を待つ。選挙管理委員長から、松本候補334票、松原候補38票と。代議員席には一層の安堵感。代議員会後の記者会見で、38票の意味を問われた松本会長は「2期目はもっと頑張れとのメッセージと受け止めている」と。自信と意欲が感じられた。
 2日目は、第157回日医臨時代議員会。2期目の重責を担われる松本会長のあいさつで始まる。所信として、4つの柱を示された。①地域から中央へ②さらなる信頼を得られる医師会へ③医師の期待に応える医師会へ④一致団結する強い医師会へ――。地域医師会の皆さんとコミュニケーションを一層大切にすると明言された。地域特性を活かす郡市区等医師会を尊重し、地域医療に力を尽くす会員一人ひとりを支え高めていくのが都道府県医師会、日医の立場であるという意図を強く感じた。
 代表質問で、宮川松剛・大阪府医師会副会長の「紹介受診重点医療機関とかかりつけ医機能報告制度について」は出色の議論であった。第8次医療計画の柱である紹介受診重点医療機関は、かかりつけ医との連携に機能を集中させる医療機関とされる。その認定は、令和4年度からの「外来機能報告」がベースとなった。7年度からの「かかりつけ医機能報告」はかかりつけ医の評価の範囲にとどまらず、紹介受診重点医療機関と連携できる医療機関を限定する「かかりつけ医制度」につながりかねない。「外来機能報告」の使われ方から容易に推測できる。医師会員は制度に縛られず、それぞれのかかりつけ医機能を高め、相互に補充し地域を広くカバーしなければならない。制度化への危惧を示した。理事者からは、制度化は断固阻止するとともに、一部の営利的(?)在宅専門診療所の弊害を防ぐべく、医師会員の研讃の充実を図るとの回答であった。今後を注視せねばならない。
 医療DX、医師・診療科の偏在、災害医療、さらには勤務医・女性医師の参画を高める課題まで、多彩な代表質問であった。今後の地域医師会の目指すべき方向に貴重な示唆を与える5時間に及ぶ論議を終えた。「地域から中央へ」という執行部に期待したい。(翔)