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電子処方箋

府医ニュース

2024年7月3日 第3077号

五月雨式機能追加のジレンマ

 6月19日、厚生労働省「電子処方箋等検討ワーキンググループ」の第5回会合が開催され、今後開発する新機能の案が示された。
 (1)チェック機能の拡充……①現行の処方内容確定時(および任意のタイミング)における、成分情報をもとにした重複投薬や併用禁忌の有無に加え、「併用注意」についてもチェックを行ってはどうか。②電子カルテ情報共有サービス(来年4月運用開始予定)由来の情報を活用し、アレルギー歴や傷病名、検査値等ともチェックがかかるようにしてはどうか。例として、高度腎障害や、特定の疾患の患者に禁忌となっている薬剤、当該薬剤にアレルギー歴がある場合を挙げている。ただし、禁忌判定のためのマスタ整備が必要となることから、どの範囲でアラートを出すか(例えばペニシリン系薬剤のアレルギーであれば、ペニシリン系とするのか、βラクタム系全般についてアラートを出すのか、添付文書に記載のあるものとするのか)が検討課題とした。また、レスポンス速度や医療機関の改修費等への影響から、必須の機能とするのか電子カルテ等ベンダーにおいて実装を選択可能とするのかも検討事項に挙げている。
 (2)事前送付の合理化・利便性向上……現行の、患者が引換番号と被保険者番号等を薬局に伝達する仕組みでは、従来FAXを用いて薬剤交付を受けていた患者からは手間になるとの指摘がある。このため、マイナポータルに事前に患者が「かかりつけ薬局」を設定しておくことで、自動的に薬局に電子処方箋が送付される仕組みが考えられるとした。
 (3)データの更なる利活用……治療薬の処方と地域の情報をかけあわせることで、インフルエンザ等の流行状況の分析に用いたり、医薬品の生産や確保計画等に活用してはどうか。
 (4)薬局起点の情報(トレーシングレポート等)の共有・標準化等……残薬や服薬状況、体調の変化等に関する情報を、医療機関・薬局を跨いで共有してはどうか。
 これらの案について、今後検討が続けられることとなる。
 他方、6月16日現在、電子処方箋対応の医療機関は、大阪府内では6病院(全病院の約1%)、184医科診療所(約2%)にとどまっている。当然ながら、重複投薬等のチェック機能の対象は、電子処方箋管理サービスに登録された情報のみであるため、電子処方箋未対応医療機関の処方はチェックされない(レセプト由来の薬剤情報は使用されない)。
 昨年12月に、リフィル処方箋や口頭同意、マイナンバーカードによる電子署名機能が追加された。今年10月には、後発品変更不可の理由の記録と表示、来年1月には、院内外来/入院中/退院時処方が登録可能となる予定である。今後も機能追加があまりに五月雨式で、その都度手間や費用を要するなら、便利さを期待して導入に意欲的な医療機関であっても、当面見送る判断をして不思議ではない。
 大多数の医療機関が参加しなければ十分なメリットを享受できない仕組みが、多くの医療機関にとって参加に踏み切れない状況になっているところにジレンマがある。過渡期ゆえか、拙速か――。(学)