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第328回府医定例代議員会

府医ニュース

2024年7月3日 第3077号

高井会長、新執行部にエール

 第328回大阪府医師会定例代議員会(岡原猛議長/定数273人)が6月20日午後、府医会館で開かれ、府医代議員184人が出席した。執行部は令和5年度事業を報告。また同決算等を上程し承認された。当面の医療問題も協議し、決議を採択した。

 岡原議長の議事進行で開会し、はじめに高井康之会長があいさつ。新型コロナウイルス感染症に触れ、高齢者や基礎疾患のある人にとっては、「普通の風邪とは違う」との認識が必要であり、今後も警戒しなければならないと述べた。
 診療報酬改定については、プラス0.88%との名目ではあるが、「医療機関の経営改善につながるものではない」と言明。特に、特定疾患療養管理科の見直しによる減収は大きく、物価高騰もあいまって医療機関経営への影響が危惧されるとした。あわせて、物価、賃金の上昇分を診療報酬に継続的に反映できなければ、「医療崩壊につながりかねない」と断じた。
 高井会長は、「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針2024)」にも注目していると言及。公的保険の縮小や医師の偏在対策に向けての経済的インセンティブなどの方針が見て取れるとし、今後、強引な手法を取るようであれば「何としてでも阻止する必要がある」と力を込めた。
 最後に、本定例代議員会の終結後に次期執行部へ会務を引き継ぐと報告。医療を取り巻く情勢は厳しいが、「執行部が一丸となって、会務の円滑な執行に取り組んでほしい」と結んだ。

5年度事業を報告
同決算を承認

 岡原議長から交代し、以後は井口和彦副議長が議事を進行した。栗山隆信理事が代議員の異動を報告。その後、中尾正俊副会長が令和5年度に府医が取り組んだ事業を概説した。
 当日の議事では、①5年度府医決算②7年度府医会費賦課徴収③7年度府医新入会員に対する会館設備資金応益負担金の賦課徴収――が上程され、北村良夫理事が概要・趣旨を説明。決算では、当期一般正味財産増減額は、3憶769万1396円のプラスと報告した。その後、北村俊雄監事が第1号議案は適正と宣告。いずれの議案も挙手多数で承認された。

7項目の決議を採択

 協議では、「当面の医療問題について」として、栗山理事が決議案を読み上げた。岡原和弘代議員(堺市)、武本優次代議員(泉大津市)より、決議文の文言だけではなく、「強い姿勢を示してほしい」と要望。永濵要理事は、日本医師会、近畿医師会連合とも協力してより強い意志で伝えていくと応じた。
 その後、▽かかりつけ医機能を担う医療機関に対する診療報酬上の評価▽医療DXの拙速な推進への注視と医療機関への十分な支援の実施▽国民皆保険制度を守るための社会保障費の財源の確保――など7項目の決議案が採択された。決議については、政府、与党のほか日医、都道府県医師会、十四大都市医師会などに送付される。
 高井会長は閉会あいさつで、引き続き正しい方向へ進むようご指導願いたいと結んだ。

決 議

 かかりつけ医機能に関する制度整備を進めるとして、令和6年4月から政府により医療機能情報提供制度による国民・患者への情報提供の充実・強化が開始されている。
 かかりつけ医機能を担うのは、診療所、在宅療養支援診療所及び在宅療養支援病院等である。しかしながら、令和6年度診療報酬改定においては、医療の効率化、適正化と称して、特定疾患療養管理料の対象から高血圧、糖尿病、脂質異常症の3疾患が除外され、医療機関、特に診療所の経営に大きな影響を与えることになった。外来診療報酬の包括化への布石としても危惧される。
 かかりつけ医機能を十分に発揮するためには、医療機関の経営が安定し、日常診療に専念できる体制が不可欠であり、それを整えるのが診療報酬であり、今回のような診療所を狙い撃ちした改定手法は容認できない。また、社会的共通資本を守ることが国の責務であるにもかかわらず、オンライン資格確認システムの義務化やオンライン請求の実施、電子処方箋、電子カルテへの対応など、矢継ぎ早に医療DX推進のための施策を実施し、医療機関は環境整備に翻弄されている。
 まっとうな医療を行う医療機関が報われる診療報酬体系や医療制度が必要であり、医療DXを推進するためには、設備投資及びその運用に係る費用は国の責任において行うべきである。
 かかりつけ医機能の関連項目に、リフィル処方の周知を強要するなど、なし崩し的に拡大を図ろうとしている。診療の機会を損ないかねないリフィル処方は廃止すべきである。
 オンライン診療については、対面診療が5割に満たない医療機関や初診時の麻薬・向精神薬の処方が存在するなど、不適切な運営が指摘されており、保険診療においては、対面診療を原則とし、中医協において大規模調査に基づく十分な検証を行った上で見直すべきである。
 令和6年10月から実施される長期収載品の選定療養の仕組みについては、本来、長期収載品であっても薬価を見直した上、保険診療で処方する医薬品はすべて保険給付すべきである。長期収載品と後発品の価格差の一部を選定療養化することは、患者負担の拡大を招くばかりか、将来的に参照価格制度の導入に道をひらくことにつながりかねない。また、医薬品の安定供給のためには、国の主導による医薬品業界の再編が必要である。
 政府が成立を目指した「こども・子育て支援金制度」については、全国民に負担を求める制度である以上、国民の理解を得た制度とし、社会保障負担率が上昇しないよう配慮する必要がある。
 今後も社会保障を充実させるため、必要な財源を確保し、全ての国民が安心して安全かつ質の高い医療を受けられるよう下記事項を要望する。



一、かかりつけ医機能を担う医療機関に対する診療報酬上の評価
一、医療DXの拙速な推進への注視と医療機関への十分な支援の実施
一、患者の健康に影響を及ぼしかねないリフィル処方の廃止
一、オンライン診療における検証の実施及び算定要件の見直し
一、長期収載品の選定療養化の見直し
一、国の主導による医薬品業界の再編と医薬品の安定供給の確保
一、国民皆保険制度を守るための社会保障費の財源の確保

令和6年6月20日
一般社団法人大阪府医師会第328回(定例)代議員会