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今年は、梅雨入りが遅かった

府医ニュース

2024年6月26日 第3076号

樹も草も
しづかにて梅雨
はじまりぬ
      日野 草城

 しとしとと静かに梅雨が始まった様子を詠んだ歌だ。他の言語と比べて、日本語では、雨を表す言葉の種類が多いそうだ。身近な自然として、催花雨(さいかう)、花時雨(はなしぐれ)、青葉雨(あおばあめ)、慈雨(じう)、驟雨(しゅうう)、月時雨(つきしぐれ)、雪解雨(ゆきげあめ)など四季を彩る言葉がある。
 梅雨と聞くと、熟した梅の実や雨に濡れる紫陽花が思い浮かぶし、同じ読みでも黴雨という文字を見ると、じとっと生えるカビを想像してしまう。また、長く続くしとしと雨は、恵みの雨である一方、心と体の不調を招くこともある。憂鬱な気持ちになるのは、気圧や温度湿度の変化や、自律神経の乱れ、日照時間の短縮によるセロトニンの分泌低下などでうつ症状が表面化しやすくなるからだそうだ。
 ただ、梅雨は変容しつつある。海水温が上昇し、大量の水蒸気が梅雨前線付近に運ばれて、降水帯を形成し、大雨をもたらす。線状降水帯を含めた7月の集中豪雨は、45年前の3倍以上に増加。長期的にも増加傾向と予測されている。日本の気象庁は予報用語として、局地的大雨(急に強く降り、短時間に狭い範囲に数十㍉程度の雨量をもたらす雨)と集中豪雨(警報基準を超えるような局地的な大雨)とを用いている。災害をもたらす豪雨を含め、梅雨の大雨と真夏の猛暑、極端な天気に今後も注意が必要だ。
 長雨を、物思いにふける「眺め」にかけた、万葉の歌人達のような、雨を楽しみ慈しむ感性は、過去の産物となってしまうのだろうか。(颯)