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府医ニュース

2024年6月26日 第3076号

 ◆みちのくの旅で「こけしえじこ」を見つけた。えじこ(嬰児籠)に入った乳児を見立てたこけし。愛らしく、コミカルな風情の民具。
 ◆えじこは、藁で編んだ浅い桶の形をした育児用具。農山村では、若い母親を含め、家族総出で働かねばならない。乳児の世話に人手をかけれない。生後すぐ、乳児が動き回らないように、えじこに入れた。家に残すか、野良で側に置く。狭く身動きがとれず、日当たりの悪い所に長く据え置かれることに。
 ◆こけしの愛らしさとは異なり、乳児には過酷な育児である。心身の発育に支障があったであろう。近年、育児習慣の改善でえじこは姿を消している。「育児のことは家族で」という旧来の家族主義の下、家族で手がなくやむを得ずえじこを使ったと言えるだろう。
 ◆出産率が下がり続け、少子化が止まらない。背影に、子育てを孤立させる家族主義があると識者は言う。地域から職場まで、社会が家族ことに母親を孤立させず、子育ての負担を分け合うことが必要と。こけしえじこに悲しみを思う。(翔)