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新型コロナ定期接種

府医ニュース

2024年6月26日 第3076号

有料化により接種率は低迷か

 令和6年5月29日、厚生労働省は今年度の秋から冬の新型コロナウイルス感染症ワクチン(以下、コロナワクチン)の定期接種について公表した。個人の重症化予防を目的とする定期接種(B類)として実施する。
 対象者は、65歳以上、あるいは60歳から64歳までの一定の基礎疾患を有する者(インフルエンザワクチンの定期接種対象者と同様)で、秋冬に1回接種する。定期接種対象者以外の者や、定期接種の時期以外に接種する場合は、任意接種として自費となる。
 ワクチン費用は想定1回1万5300円で、うち8300円が国負担。自己負担の最大は7千円であるが、市町村の負担により、それ以下となる。例えば群馬県高崎市では、5500円が市の負担で残り1500円が自己負担となる。厚労省が5月27日に専門家会議で示した資料には、新型コロナウイルス感染症に既感染の人が保有する抗N抗体は、全世代では60.7%であるが、5~19歳は85%以上、70歳以上は30%台と低率であった。それを踏まえ、65歳以上の高齢者を定期接種の対象者としている。市町村の負担額が少なく自己負担が大きくなると、接種率が低下する恐れがある。
 さらに厚労省は、6年度のコロナワクチンの株を現在流行のJN1変異株とすると発表した。昨年度末に承認された第一三共のmRNAワクチンのダイチロナは、インフルエンザワクチン同様1バイアル2回分で、1箱に2バイアル入っている。2~8度の冷蔵保存であり、個人接種にはワクチンの無駄がなく使いやすい。今年度はこれが主流になるものと思われる。
 厚労省が6月5日に公表した人口動態統計では、「コロナワクチン接種が死因」とされた人数が初めて計上された。4年は23人、5年は37人であった。厚労省は、現場の医師が死亡診断書に記入した死亡原因であり、多いか少ないかは評価できないとした。4月15日時点で明らかに「接種と死亡との因果関係が否定できない」としたのは2人で、数字は一致していない。
 独立行政法人・医薬品医療機器総合機構(PMDA)の専門家会議は因果関係を審査し、因果関係否定できない(α)、因果関係なし(β)、評価不能(γ)に分類。4月15日時点では(α)2件、(β)11件、(γ)2182件であった。ワクチン被害者の救済制度の申請件数(4月25日)は1万949件で、うち8728件を審査し、7117件(うち死亡は561件)が認定されている。この死亡数は他のワクチンと比べて決して少なくない。副反応として、心臓や血管のイベント等が報告されている。大動脈解離、脳出血、クモ膜下出血、脳梗塞、心筋炎、心膜炎等である。早急に検証が必要である。副反応の少ない遺伝子組み換えタンパクワクチンや不活化ワクチンも選択肢の一つとなる。